214-3(1040)オッリペッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの
オッリペッカ・ヘイノネン+佐藤学、NHK出版、2007
PISAの学力調査で2000年2003年の二回とも世界一を達成したフィンランドの教育について、1994年から1999年に教育大臣を務めたオッリペッカ・ヘイノネン氏に対し、佐藤学さんがインタビューを行った記録。NHK特集「未来への提言」で放送されたもの。
教育大臣の顧問をしていた29歳の時、大臣が議会議長になったため、偶然にも議員経験もなしに教育大臣になったというオッリペッカ・ヘイノネン氏。平等と質、equalityがqualityにつながるという。(ちょっとe話だね。(^ ^)o
2009年までには、80%がなんらかの高等教育を受けるようにするという目標も掲げている。
数学、科学について女子と男子の学力格差がなく、読解力においては女子が高いというのも特徴だ。
何が、教育改革を成功させたのか。自由と柔軟性。現場の権限委譲だ。
佐藤氏に尋ねられたとき、氏は150年前のフィンランド独立、国民意識が生まれたときにまでハナシを遡った。それ以降、中央集権的に、国内の水準をあげるために、全国一律に教育政策を進めてきた。氏は、もう基盤整備は充分整ったのだ、新たな政策が求められる時代に入ったのだと、教科書検定を廃止、国家による学習指導要領の基準も1/3に削減。現場に多くを任せたのだ。
何か一つだけで、フィンランドの成功を語ることはできない。
しかし、佐藤氏は次の四つを挙げる。
1. リテラシーの高さ、共通教養、言語、読書量、図書館の多さなど。
2. 中等教育段階までの総合学校。学校格差、地域格差のなさ。能力別の廃止。
3. 教師の質の高さ。全員が大学院レベル。職業として人気。
4. 女性の学力の高さ。社会的地位の高さ。
アメリカの高等教育進学率が8割という数字を以前知ったとき、わたしは、日本ではただでも大学に8割を進学させることはできない、と思った。学ぶことからの逃避を強く感じるからだ。
学ぶことが楽しい、学び続ける動機付けを社会一般の人が持っている。そんな背景がなければ、高い教養は広がらない。高い教養が、社会的な高い達成につながるのだ。
経済成長を考えてはならない。それは結果なのだ。
スピードを求めてはならない。人間に焦点をあてること。あえてスローダウンすること。
それがこれからの教育の課題なのだ、と氏はさらに先を読む。