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脱ファスト風土宣言 商店街を救え!

199-3(968)脱ファスト風土宣言 商店街を救え!
三浦展、洋泉社新書、2006

日本の駅前商店街というのは国際的にも評価の高いエコロジカルでヒューマンな町のスタイルらしい。『ファスト風土化する日本』という同じ出版社からの本で、著者は大型複合商業施設やアウトレットなどの郊外型の消費スタイルが日本をだめにしていることを指摘する。この本は、それに対するアンチを実践している建築家、デザイナーら8名からの報告とオギュスタン・ベルクとの対談で構成されている。

「都市の中で自然と住む」(第五章161-)という甲斐徹郎さんの実践は「経堂の杜」という都市型共同緑空間の創造だ。都市型の豊かさというのは個々が自立的に、好きなように利便性を追求して住むという、田舎の共同体の豊かさ、依存型共生とは違う豊かさの追求であった。
これからは都市にも自立型共生という新たな共同による豊かさ、住空間を「箱」から面のひろがりのある、より快適な空間として創造することができる可能性を追求するのだという。都会の便利さに、共同体だからこそ生み出せる豊かさをデザインするということだ。
具体的には共同住宅や団地などの開発のコンセプトづくりなどだ。

その他、山形の蔵プロジェクト、石蔵、日干し煉瓦土塀、東京の空きビル合法的スクウォッター、などおもしろい実践ばかりが本当に満載されている本だ。

中でも、今回の「わたしたちの住む場所」授業に役立ちそうなのが、第四章「子どもがよく育つ街」だ。便利な街というのは大人の視点からのことで、子どもが育つ街ではないと著者の仙田満さんは言う。子どもの遊び空間は1974年に激減していて、アナーキースペース、道スペース、自然スペースについてそれが著しい。139
室内遊びと戸外遊びの時間が逆転したのも1965年あたりだという。

四国、徳島のおばあちゃんの家で過ごした夏休み、室内遊びなんて一つも覚えていないけれど、堺市の我が家では、屋外もアナーキーな「廃墟」「捨てられた空間」が多い場所だったので、記憶はあるが、やっぱり室内遊びの記憶は残っている。

子どもは遊びを通して「身体性」「社会性」「感性」「創造性」を伸ばすという。141
子どもを育てる場の原理原則というものがあるのだという。著者がまとめた12の項目・ガイドラインを紹介しておく。
1. 本物の多様な体験
2. 自然環境
3. 豊かな遊び空間
4. さまざまな交流
5. 子どもと家族のための機会
6. 安全性
7. 健康で健全な生活
・・・・・
なんかまじめだな。遊環構造の七つの原則の方がおもしろい。
循環・変化・シンボル・めまい・近道・広場・ポーラス多孔質  150

さらに提案はもっと過激でおもしろい。
・公園にプレイファシリテーターを
・住居は五階以下の集合住宅に共同の中庭
・校庭を自然体験の場に
・長期間の自然体験ができる自然学校を高学年以上、中学生たちに
・都市を人間優先の道に
・親と子、地域のさまざまなスポーツ交流

子どもとともに子どもの生きる空間を見つめてみたいと思う。そこから共に何かを見出す力が自分たち大人、ファシリテーターにあるかどうかが問われる。

■自分のためのエコロジー
甲斐徹郎、ちくまプリマー新書、2006
面白い。ペアガラスが結露を防ぐ。とペアガラスを導入したら、寒い押し入れの中に結露ができた。ペアガラスだけではダメで、気密性の高い家を作ったら、夏に熱が逃げなくて困った。
面白すぎる。で、伝統的に緑の環境によって家の性能不足を補っていた昔の家は合理的だった。
と、こういう先進的な取り組みをする人に家を作ってもらった人はいい迷惑? 先端的な人はそれなりに儲けて逃げ切る?
の話なのかと思ったら、「便利」も「ゆたかさ」も求めるパラダイムシフトへと話が転換していった。

by eric-blog | 2007-10-02 10:23 | ■週5プロジェクト07
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