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光とともに・・・  自閉症児を抱えて

194-1(933)光とともに・・・  自閉症児を抱えて
戸部けいこ、秋田書店、2002

よくある実録ものではなく、著者による取材によって再構成されたフィクション。その分物語として読みやすく、わかりやすくなっている。自閉症という治ることのない障害をもった子ども、家族、地域に住む人とどのようにつきあっていくかは、どれだけ「こちら」が自閉症という障害を理解できるかにかかっているのだなということがよくわかる。光のお母さんが何度もつぶやくことば。「光がどんな世界に住んでいるのか、お母さん知りたいよ。」

脳の障害なのか、わたしたちの見ている世界とはまったく違う世界を体感している彼らは、耳からのことばよりは目からの情報、変化よりは規則性にひかれる傾向があり、人間関係が苦手。と、光のことをどんどん「発見」していく周囲の人々は、とても前向き。

このコミックのよいところは、本ではなかなかわからない写真を使うスケジュールや人の確認など、周りの人々のともに生きるための工夫がふんだんに漫画の中に出てくること。わかりやすい。そして、「自閉症の子どもにとって安全なこと、わかりやすいことは、他の子どもにとっても安全でわかりやすい工夫につながる」という保育園や小学校の先生方の姿勢がとても引かれる。

光のために生活を円滑に進めるためのさまざまな工夫をする光パパのモデルとなっている人のホームページはお勧め。公務員として働いている明石さんのお話もグッド。

しかし、インターネットを検索すると、やはり家族や地域を離れ、療養院生活をしている人がいるのも現実。それぞれなのだと思いながらも、自閉症の人たちの間にもさまざまな境遇の違いがある。それをもまた、比べてしまって自分を責める家族もあるのだろうなと思うと、どこまでも哀しい。

とはいえ、この漫画、明るく、元気に、「あ、こんな人もいるんだ」と、人間の存在がいとおしくなる本です。お勧め!
by eric-blog | 2007-08-27 09:28 | ■週5プロジェクト07
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