人気ブログランキング | 話題のタグを見る

子乞い 沖縄 孤島の歳月

188-6(902)子乞い 沖縄 孤島の歳月
森口豁、凱風社、2005

尾瀬あきらの『光の島』の原作がこれだったのだ。ビックコミックオリジナルで連載されていた、あのはじけるような光たちの姿。なんと忠実に描かれていたのだろうか、とシーン、シーンを思い出しながら、読み進めた。絵よりも、苦みが残る内容なのではあるが。
森口さんの本を探したのは、森達也さんが沖縄の映画祭で、ドキュメンタリーを見た。その製作者が森口さんだったと書かれていたのを読んで、『非武の島』『最後の学徒兵』などを借りてみたのだ。硬派のジャーナリスト、なのだな。この本も40年の島通いの結晶だ。初版は1985年、増補改訂版は1999年、そして新装普及版が、いまわたしが手にしている美しい珊瑚海ブルーの装丁のものだ。わたしは見ていないが、『瑠璃の島』がドラマ化されたもののタイトル。子乞い、じゃあね。暗い? からかな。

この実在する光の島は、鳩間島といい、西表島にもっとも近く、石垣島に40キロ程度。沖縄県竹富町。
薩摩藩に支配された琉球府からの厳しい人頭税に喘いでいた八重山諸島では、「島分け」という分村によって、本村の人口を維持することが行われていた。鳩間島も1702年、そのような島分けの結果として生まれた。中央政府の恩恵など、何もない場での厳しい税とは、何なのだろうか。

森口さんの物語は、沖縄本土復帰から10年の1982年ごろ。人口減と公共サービスの相次ぐ打ち切り(病院がなくなる、郵便局がなくなる、駐在さんはいない?)、小学生一人だけという状態で、学校の存続すら危ぶまれる状況。

一人の里子を引き受けたところから、島暮らしを子どもの最良の育ちの現場にまでしていく試みが始まる。わたしは、子どもが小中学校くらいの時に、田舎暮らしを体験するのは大賛成なのだ。18歳くらいをボランティアとか、徴兵して、なんて意見を言っていた人もいたが、できれば、すべての子どもたちに、一年間の里子体験を、とまで思う。誰が世話するんだ? 鳩間島では70歳代の里親もいたというから驚きだ。里が子どもたちを引き受けられないようになってしまったら、本当に、故里は失われることになるのだろうなあ。すごいネーミングだね、「里子」というこの概念。

いま、中学校も復活し、子どもたちは11人を数えるまでになったと、追記にいう。小学校を救った通事勇生さんも、30歳になるのだ。

日本全国高齢化少子化人口減状況の中で、地域をどのように維持するかは共通の課題ではあるが、離島の強みと弱みをどう活かすかなのだろうなあ。

本土からの中学生が「島はせまいが、ひろい」と感想を述べた。その感性に感心したと。264

一人ひとりの生がひろびろと展開する場所であり続けることが、いまの自由主義資本主義の下での、特に都会では、とても難しくなっている。そんなことを感じ取って、鳩間を選んでくる子どももいるのだなあ。
by eric-blog | 2007-06-30 09:53 | ■週5プロジェクト07
<< 赤瓦の家 朝鮮から来た従軍慰安婦 ジェンダー白書  女性と経済 >>