150-6(723)「男だてら」に「女泣き」ジェンダーと男女共同参画社会入門
奥山和宏、文芸社、2003 岡山県の研修に出かけた時、紹介された本の一つ。図書館になくて、ジュンク堂でお取り寄せで、ずいぶん時間がかかってしまった。2006年三刷りのものだから、ずいぶん売れているものだ。 自身の、小学校での授業について「ジエンダーフリーは暴論」とやりだまにあげられた経験をお持ちだ。 セックスとセクシャリティとジェンダーは、それぞれ違うものだけれど、ジェンダーフリーというと性差(sex)の違いもないように扱うのか、と反論される、らしい。 要は性の違いで、「入り口」の段階で最初から扱いを変えてしまうことがおかしいという問題。就職という社会生活について、結婚という家庭生活について、それぞれの「入り口」で女男で役割を分けてしまうことは、おかしいのだ。 基本的には、その「人」の資質、能力、希望、意思、条件に応じて、仕事や役割が選び取られていくことが望ましい。「括らずに活かせ男女の多様性」41 では、いまのジェンダーフリー・バッシングは何をしているのか、なぜなのかについて、奥山さんは、「らしさ」とはアイデンティティにかかわるものだけに過剰に反応する人々がいるのだろう、82「役割は異なるが価値は等しい」という枠組みによる育ちをした人々とそこからの既得権にしがみついている人々がいるのだろうという。「これまでの「枠組み」に居心地のよさを感じている人たち」149 しかし、逆流はいつまでも続かない。本流は流れていく、と。 「男女が互いの違いを認め、生かしあう」といういかにも耳に快い言い回しは、その「違い」を皆が同じように備えているという空想的な人間観を前提にしている。126 などの表現が○。 そして、彼らの論理の展開を次のようにまとめている。127 ・男女共同参画社会は「性差を否定」するのか! を売り込む ・「男らしさ」「女らしさ」を否定するのかと畳み込む ・性差とジェンダー差の区別はあえてしない、あるいはわからないふりをする ・「「性差」を取り払うことをめざすものではない」とすべきところを「男らしさ、女らしさを否定するものではない」と混同させる ・国が「男らしさ、女らしさ」を肯定したことにする 個人の好みは公的規範にならない。 「男らしさ」「女らしさ」についての公私混同はやめよう。 「男らしさ」「女らしさ」はジェンダーの問題であり、それは時代により、社会により、変わるし、特に人権にかかわって異議申し立てがある場合は、「人間」を優先する。 男女の役割について、職業的イメージとしては ・補助的な仕事 ・生活に潤いをもたらす ・「美しさ」にかかわるもの というようなかたよりがある。69 現実の社会そのものが「かくされたカリキュラム」として機能していくのだが、だからこそ、啓発的な教材においては、「あえて」自分のたちの思い込みに気づくために、女男を入れ替えて考えてみるというトレーニングが大事だと奥山さんは言う。 その他、おもしろかったのは ・「女ことば」ではケンカができない 102 ・自称詞の種類が女性には少ない103 ・文末形式で「断定」「命令」「強調」「確認」「否定」などがいずれも穏やかになってしまう106 三つ目の文末は最近は変わりつつあり、女性特有の文末形式はいずれ寿命だというのが国語学者の見解らしい。 いずれにしろ「男ことば」「女ことば」はいわば私的なことばで、公的な場所では用いられることはない。108 最後に 「男女共同参画社会のめざすものは「豊かさ」のとらえ方自体の革命なのかもしれない。」 変革の本質が何なのかはわからないけれど、現象としては変革は起きているというをわかりやすく書いている本だ。 最近のわたしのこだわりが「近代の超克」なのですが、市民の「男性」色、専門家・専門職、科学の「男性」色など、「男性」色の強いものは、何か人間性に対する落とし穴があると疑ってかかることにした方がいいね。 「桃太郎を育てたのは誰?」など千年考学の題材になりそうなものもあるのがいい。
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| 2006-09-29 11:29
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