Last Child in the Wood  Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder

137-4(661) Last Child in the Wood  Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder
Richard Louv, Algonquin Books of Chapel Hill, 2005
邦題 あなたの子どもに自然が足りない

レスリー・コームズさんが、昨年、環境教育者の間でかなり話題になったと紹介された本。著者は、ベビーブーマー世代、日本でいうところの団塊の世代だ。
子ども、教育のテーマを中心に、ここ10年ほど、コラムニストとしてサンディエゴ・トリビューンで執筆、ニューヨークタイムズなどにも寄稿している人である。その間に、全米的に3000人を越える子ども、大人、教員、その他専門家たちにインタビューしてきている。専門書というよりは、インタビューや先行知見などの集大成ということになろうか。そのために、イメージが先行しがちな造語が多い。「自然欠乏症」Nature Deficitというのがそうだ。著者は、この言葉は神経生理学的な用語ではないことを断りつつ、共通のテーマとして考える必要があることを問題提起しているのだ。

第一部は自然と子どもの関係の変化、現状である。
第二部で、自然が果たす人間形成上の意味。
第三部では、しかし、わたしたちの社会が子どもを自然から遠ざけている背景を説明。
第四部から第七部までは、自然と子どもの関係を取り戻すための活動報告だ。

Criminalization of Natural Play27自然遊びの犯罪視傾向

人口が増え過ぎたために、自然保護の観点から「ツリーハウス」のような遊びが禁止された。ここでも例で出てくるのがチェサピーク湾なのだが、人口増加の二倍のスピードで、土地開発が進んでいるとか、過去350年間で開発されたより広い土地がこれからの25年で開発されるような勢いであるとか。30

De-natured childhood31脱自然化された子ども時代
室内遊び中心になった。電子ゲームなどが増加した。

Biophilia43 Edward O. Wilson の仮説、生命親愛、ecopsycologyと呼ばれる生態心理学運動。わたしたちのいのちは地球の進化につながっている。

Re-naturing of Childhood Health52子ども時代の健全さに自然を取り戻す

co-evolution of hominid hand and brain66Frank Wilson、The Hand

Eighth Intelligence70Howard Gardnerは多重知能で知られる人だが、最近8つめを付け足したという。Nature-smartだ。word, number/reasoning, body, picture, music, people, self-smartの7つに加えてだ。PLT会議でKathyのことをPeople SmartとRudyが表現していたのは、ここからだったのだな。多重知能でsmartという言葉をつかっているのか。
五感、パターン認識、生命親愛的、観察力、そしてセンス・オブ・ワンダー
創造力。

自然は"spirit of place"という自信を与えてくれる。85
"loose-parts"という遊びがある。86

自然欠乏症対策の効果がもっとも現れるのがADHDなどの学習困難児童。98-
その子どもたちのためにRestorative Environment自然回復環境を準備してやると、効果が高い。

Nature Time is not Leisure Time 120自然時間は余暇時間ではない。自然の中で過ごす時間は必須であり、子どもに対する必要な投資なのだ。

にもかかわらず、わたしたちの社会は「恐怖」で色どられていて、子どもたちが自然体験をするのはとても難しい。9.11以降、その傾向は激化している。
Bogeyman Syndrome124The Blari Witch Projectのように、沼男恐怖症。何が起こるかわからないのに、その恐怖心が実際に起こることをはるかに上回る。

教育そのものが自然へのバリヤーだ。132
Ecophobia133地球環境問題ばかり学んで、すっかりエコロジー恐怖症になっている。

子どもと自然の再会を果たすために、大事なことの一つは「退屈さ」だという。退屈さが創造性のもとであるからだ。166

そしてnational stranger-danger fear の波を打ち勝つには、自然との触れ合いを増やして、子どもたちに自然遊びが培ってくれる力をつけることだという。184
assessing danger 危険予知能力とでもいうようなものは、経験からしか身につかない、と。

fishing, hunting, waving in the ocean, not the internet, ecoschool, camping, などの勧めはお馴染みだ。
そして、日本でも、というか、木村幸一郎さんの活動などで知っているだけだが、都市野生生物ウォッチング。同様の動きをZoopolisと表現している。241
ヨーロッパの都市緑化運動。245
Village Home 249車の乗り入れのない住居空間
Green architect251緑の空間デザイン
Green Urban Design for Kids255空き地の再利用
都市への人口集中傾向から地方や田舎での暮しへの転向。268

足立区の公園での取り組みを思い出すような内容だ。でも、あの時も、来たのは就学前から三年生ぐらいまでだったなあ。だとすれば、親と一緒というのもいいんじゃないか。
10才くらいまでの間に、どれだけ自然の中で遊べるか、だね。
最後は、精神性のための自然の必要性、To Be Amazedの章で著書は終わっている。

そして、2003年10月の南カリフォルニアでの大火事は、著者の家の数ブロックのところまで迫った。ゲリー・スナイダーが言うように、naturaとnasci生きることと再生することと。サンディエゴは正しく灰からの再生・芽生えを見てきたのだ。

これからの方向は変えられるはずだと著者は言う。わたしたち人間の生存に必要なものは何かを考え、そして計画すること。種を播くこと。

著者は最後に、もう大学を卒業した長男と、高校2年の次男が幼かった頃に出かけたキャンプのシーンを回顧する。子どもたちに、親が自然との触れ合いや自然への畏敬、愛の気持ちを伝えることができる期間は短いのだと。10年にも満たない。しかし、その経験はからだ、心丸ごともものであり、彼らの物語りTurtle Talesとして残っていることだろうと。
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by eric-blog | 2006-06-30 12:28 | ■週5プロジェクト06 | Comments(0)
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