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何がアメリカを衰退させたか

133-1(641) 何がアメリカを衰退させたか
ジョン・シルバー、イースト・プレス、1993

「哲学者が見た」と副題にあるが、著者は、アメリカの病の分析だけでなく、大学での教授経験から、公立学校の改革の必要性と可能性を述べている。

1970年代、アメリカの大学も席巻した学生運動やアンチアカデミックの言論についての「大学を汚染するもの」Poisoning the wells of Academicは1974年に書かれたものである。

たぶん1920年代生まれであろう著者の視線はおもしろい。
マザーグースなどの格言を使った「文字練習帳」の意義、そして教育の課題として
・家庭の崩壊
・教師に対する敬意の喪失
・道徳を重んじる教育の欠如
・二ヶ国語教育の誤り
・金銭で問題が解決できるという考え方
をあげている。34

著者が言う「英語以外の言語を話す人々にその母国語での教育にコストをかけるのは不可能である」59というのはいまや反論されてしまうものだと思う。
マザーグースや聖書、格言などの文章に触れることが初期の読み書き能力の育成に役立つというのは疑わしい。
60-70年代にかけて、大学の権威が挑戦された時の対応に問題があったというのも、ではどうすればよかったのかという点で、復古主義的にすぎると思う。213

しかし、それらの時代背景を読み取るためにも、それらの時代背景がある中で、次への提言を積極的に行い、未来の世代に期待をつないでいる姿勢に、引かれるところは多い。

訳者は、たぶん著者と同年代であろう鵜川昇氏、教育畑の人である。
by eric-blog | 2006-05-22 21:27 | ■週5プロジェクト06
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