121-8(564) 匂いの力
八岩まどか、青弓社、1995
空間の日本文化を紹介した後、今週はもう紹介する予定はなかったのですが、図書館で眼に飛び込んできたタイトルがこれ。そうそう、匂いも風土・空間を構成する重要な要素だよな、と読んでみました。
この分野にも小泉武夫さんや、槇佐知子さん、関口真大さんなどの先行研究があるようだ。
日本で匂いと言えば、糞尿と発酵食品だ。農業と食文化に深く根ざしている日本の匂い。空間を満たすもの。
快感を呼び起こす匂いが、共同生活においては野性の感覚として排斥され、社会規範として不快感として条件付けられるのではないか、というのはとてもおもしろい観点だ。190
昨日は、もう一冊「ジェンダーフリー、性教育の現場」を読んでいたのだが、性にまつわる言葉も大事なことなのに、封印される。教育において、「公」の部分と「全人的成長」の両方が扱われなければならないのだが、その分担が、家庭、社会、学校の間で不分明になりつつあり、わたしの授業でもやたらめったら「セックス」「セックス」「セックス」と叫ぶ学生が出てくるという事態があるのだろう。確かに、「セックス」という言葉は英語教育で避けては通れない言葉であるが、言葉のコンテキストについても、もっとしっかり扱えればよかったのかなと、思う。
有害物や危険を察知するためのゲートキーパーでもある匂い。あまりに抑圧しすぎたり、人工的にコントロールしすぎる愚は避けなければならないんだろうなあ。
「村全体で共有する共臭。においは社会関係を反映するものであり、社会関係の束の一部でもあった」宮内泰介より、194
菊地俊英『匂いの世界』
くにべ進『においの神秘』
などがおもしろそうだ。