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若者はなぜ大人になれないのか

118-3(553) 若者はなぜ大人になれないのか 家族・国家・シティズンシップ
G.ジョーンズ、C.ウォーレス、新評論、1996
Youth, Family and Citizenship, Gill Jones and Claire Wallace, 1992

刷りを重ねて、2002年にも出版されているようだ。この本は「買い」だな。日本語訳のタイトルの副題が原著のタイトルなのだが、「大人になる」というのを明確に「シティズンシップ」と定義しているところがいい。
とはいえ、シティズンシップとしては未熟であっても、わたしたちは誰しも社会のメンバーです。この本は移行に焦点をあてているので、若者が積極的なメンバーであるという視点からも、考えるべきだろうな、という感想を持ちました。

シティズンシップとは、近代国家のメンバーとしての個人の地位をさす用語。個人と国家の間の、権利と義務に関する契約を指す。16

若者と家族、若者と市場、若者と国家との関係が、若者の成人への移行期にどのように関わっているかに焦点をあてている。監修にあたった宮本みち子さんは後書きで「日本の読者は英国と日本で若者のおかれた状況の違いに驚くだろうが」と懸念を表明されているが、この本が「買い」であるのは、若者・青年期、家族、社会についての議論の基本的なところを整理し、青年期の特徴の変化、教育や労働市場の変化などとの関連、社会保障制度のあり方についても基本的なところを整理してくれているところである。そのため、日英の違いはあるとしても「点検」の視点を獲得するものとしてとても役にたつ。

産業社会においては、第一次社会化をになう家庭に加えて、第二次社会化をになう教育=国家の意図=が必要であるという議論から、教育のあり方を考えるというアプローチも示唆的である。29

社会的再生産と持続可能な社会との関係というものも考えてみたいと思いました。

斬新な問題提起も含みながら、それだけに走っていない本です。
日本にいて良かったあ、と思うのは、こういういい翻訳書に出会った時ですね。たくさんの文献の中から、その分野の専門家から見て有用なものが優先的に翻訳されてくるわけですから。彼我の制度的な違いについてり理解が必要なことから、翻訳に3年かかったと後書きにありました。感謝。
by eric-blog | 2006-01-18 12:22 | ■週5プロジェクト05
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