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沈黙する人権

沈黙する人権

石崎学、遠藤比呂道編、法律文化社、2012

2793冊目



人権は「バラ色の目標」を望み見る「強い個人」のものなのか?

それとも「苦しさ」が底にあるのか? 014


2章人権教育再考 阿久澤麻理子


著者は日本の人権啓発事業の特徴を「おもいやり」と「こころ」の啓発だという。

それは人権を「個人の心」の問題であるかのように位置付けている、つまり問題解決も「個人の心の持ちよう」に求めている。045

そこには国や自治体が加害者になり得るという発想もないし、責務を問う姿勢もない。


さらには「パターナリズム」すら見え隠れする。「弱者を思いやり、助けよう」

その姿勢からは、弱者自身が人権の主体であり、自己決定の権利を持つということを忘れ去らせてしまう。


「いたわる」ことの中に含まれる「ほろぼす」(緑川、1992)


弱者に対する役割期待も問題である。


では、どのような対象を志向すればいいのか?


ネオリベラリズムが元こむ「強者」と「弱者」の間の分断。049


「自由」が自己責任と裏腹である社会においては、自らの権利を学び主張することを目指すだけでは、強者のサバイバルのための人権教育になってしまう。050


共感、普遍的な権利の理解、共同性の感覚。


自己責任自己救済ではなく、連帯を作り出すこと。


5章 スティグマと人権


「社会が機能不全に陥っているとすれば、その社会への社会適応はすこぶる危険なこと。・・・完全な社会適応をしている爆撃機のパイロットは、爆弾は自分の中にあると妄想する入院中の分裂患者より、人類の生存という意味でははるかに脅威かもしれません。我々の社会自体が生物学的な機能障害的になっているのかもしれません。」(レイン、1973)



9章「語り」をめぐる権力と人権 熊本理抄


同和について語ることを強いられた時、語り得ないもどかしさ、そして語りによって同級生とどのような共通性を持ち得るのかという課題。231


しかし、「消費」される語り。「いい話を聞けた」聞く側の「いい人」。今の生活や関係性、位置性を維持した上での、良心の問題。233


聞く側、語る側の非対称性。


「成功物語」や「立派な語り」など、モデルストーリーをなぞらえてしまう。


自分にとって都合の悪い現実は「聞かない」「応答しない」「無視する」=沈黙。


マジョリティの沈黙は特権。


語らせ続けることは拷問。243


マイノリティの特権化、絶対化、

序列化。

部落、結婚、子供、運動、職業、教育、などなど



■彼女の「正しい」名前とは何か 第三世界のフェミニズムの思想

岡真理、青土社、2000

http://ericweblog.exblog.jp/1021582/

■ライフヒストリーの社会学、中野卓・桜井厚編、弘文堂、1995

http://ericweblog.exblog.jp/7770907/



by eric-blog | 2017-05-20 11:50 | □週5プロジェクト17
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