祖父はアーモン・ゲート ナチ強制収容所所長の孫

祖父はアーモン・ゲート ナチ強制収容所所長の孫

ジェニファー・テーゲ、ニコラ・ゼルマイヤー、原書房、2014、原著2013

3026冊目


プワショフ収容所の所長だったアーモン・ゲートは1946年に絞首刑になった。シンドラーとは同い年で、ユダヤ人をシンドラーの工場で働かせる許可を与えていた。


その時10ヶ月だった娘モニカは、すでに逮捕されていた父親と一度も会うことはなかった。にも関わらず、その影は彼女を生涯苦しめることになる。


精神的に不安定であった彼女は、最初のボーイフレンドで、ナイジェリア人との子どもを養護院に預けることになる。そして、ジェニファーが6歳の時、養親となったドイツ人夫妻との養子縁組を認める。


ジェニファーは知らなかったのだが、養親は実母との交通を拒否。それまでは時々に実母の家を訪ねることがあったのだが、その時、戻って来たジェニファーが不安定になっているのを見ての、養親の決断だった。


シェニファーが生まれたのは1970年、モニカが25歳の時だ。モニカの母、ルート・イレーネ・カルダーは、1943年ごろアーモンと、シンドラーを通じて知り合い、そして結婚を前提とした愛人関係を結び、ユダヤ人の財産を没収して富を築いていたアーモンと、プワショフ収容所の近くの邸宅で贅沢三昧の暮らしをしていた。


しかし、ルートは、病気がちになっていた1983年に、あるインタビューを受けた次の日に、服毒自殺をする。負担になりたくないと理由でだ。そのインタビューでも、ルートは、夫アーモンへの評価を変えることはなかった。悪いのは夫個人ではない。夫アーモンは優しい、いい人だった、と。


そして、ルートはその物語をモニカにも吹き込んだ。プワショフ収容所は労働収容所であって、絶滅収容所などではないこと、父親は無実の罪で死刑になったのだと。


モニカが、その嘘を知るのはティーンエイジになってからであった。彼女は、実家を出ることを選択する。


そして、養子に出した娘、ジェニファーには、何も伝えなかった。ジェニファーは、この本を書くにあたって、何も知らされなかったことを憤りながらも、モニカはモニカで、アーモンの娘としてどう生きればいいかを引き受けるだけで大変だったのだろうと理解をする。


シェニファーが自分の祖父のこと、そして母のことを知るのは38歳。2003年のことだ。たまたま手に取ったモニカの伝記。偶然のことだった。


ケスラー, マティアス 『それでも私は父を愛さざるをえないのです 『シンドラーのリスト』に出てくる強制収容所司令官の娘、モニカ・ゲートの人生 伊藤富雄訳、同学社2008



それから10年の、ジェニファーの軌跡が、本人及びジャーナリストであるニコラの両方から描かれる。とても、わかりやすい構成だ。時に、ジェニファーの記述は、時系列を飛び、不分明であるからだ。


アーモンの孫娘は、イスラエルを訪ね、そしてユダヤ人の親友もいる人間に育ったのだ。


ジェニファーはしばしば言う。「ナイジェリア人のような外見が、ドイツ人であれば責められるような状況でも、免責に役立った」と。多分、そのせいで、ジェニファーはイスラエルを訪れやすかったのだろうし、多分、ドイツ人であることがイスラエルに彼女の関心を向けさせたのだろう。


ジェニファーが「非アーリア人種」の特徴を持っていたことの意味は、次のようなデータを合わせて読むと、その意味の大きさを知ることができるだろう。

https://web.stanford.edu/group/fearon-research/cgi-bin/wordpress/wp-content/uploads/2013/10/Ethnic-and-Cultural-Diversity-by-Country.pdf


西洋諸国及び日本の比較の中で、日本が多様性度最低だと言うのは驚かないが、ドイツも低い方なのだ。


もちろん、そのために、子どもの頃にはいじめられたり、目立ったり、居心地が悪い思いをしたりすることがあっただろうが、養親家族の温かさがそれを補っていたことは、時々に引用される兄弟のマティアスの、彼女を心配する言葉にも見て取れる。


38歳、すでに結婚し、子どもも二人いたジェニファーが、自分自身のルーツを知り、衝撃を受け、それを乗り越えることで、母モニカの世代、ナチス高官の子ども世代よりも客観的にナチス時代を受け止めることができるようになる。個人的な心情とは切り離して。


個人的な感情としては、とジェニファーは言う。祖母はとても好きだったと。祖父が生きていたら、どう受け止めただろうかとも。




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by eric-blog | 2018-02-14 09:14 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)
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