主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿
伊勢崎賢治、布施祐仁、集英社、2017
2973冊目
ドイツ、イタリア、韓国、日本の駐留米軍の地位に関する協定を比較検討した本。
地位協定。
ドイツ、イタリアは、敗戦後も冷戦の継続により、NATO戦時体制の元での地位協定であった。
しかし、韓国、日本は、そのような枠組みがない平時に結んだものであるにもかかわらず、独伊と同様の治外法権的地位協定が結ばれていた。
また、駐留軍派遣国側が土壌汚染などについての現状復帰が独伊では求められているのに、日韓にはそれがない。環境立ち入り検査権も弱い。
ドイツは1993年の改定によって、ドイツの環境法を基地内にも当てはめることを求めている。137
2012年、オスプレイの運用制限も米軍に求めようとしたが、拒否された。 128
「安保ただ乗り論」は方便。187
しかも、日本は他国に比較して手厚い資金提供も行なっていることはつとに有名だ。
巻末資料に伊勢崎さんが翻訳した「アメリカ国際安全保障諮問委員会作成「地位協定に関する報告書」概要部分」が収録されている。260
ISAB, International Security Advisory Board
https://www.state.gov/t/avc/isab/
Report on Status of Forces Agreements
https://www.state.gov/t/avc/isab/236234.htm
SOFAs serve a number of important U.S. interests, key among them being protection of U.S. military personnel from being subject to unfair criminal or civil justice systems.
地位協定の目的は、米軍人を不公正な司法制度の対象に゜ならないようにすること。
であるとするならば、独伊、日韓のような先進国に対し、現在のような協定を押し付けることは、不当だとしか言いようがない。
この報告書では、地位協定が結ばれる背景が変化してきていると指摘している。
1. 第二次世界大戦後の戦時の戦闘と占領から、安全保障上の義務による、完全な主権国家への長期駐留へと変化した。
2. 冷戦後に、第三世界諸国、旧ソ連から解放された国々、安全保障上の義務も、正式な同盟関係にもない国に、米軍が「関与」engagementし始めた。
3. 紛争終了後の移行期、平和維持、人道支援で、広域的な低強度紛争及び若干の大規模戦闘を伴う状況。
4. 911以降のイラクとアフガニスタンでの戦争、長期的な対テロ戦争。
報告書では10の具体的な原則が勧告されている。
1. 地位協定の交渉を優先する。 米軍の要員の保護。
2. それぞれにテーラーメイドな交渉を。
3. ガッし夕刻の法体系による刑事裁判権の優位性の保持。
4. 請負業者の地位的保護はケースバイケース
5. 何らかの「互恵性」を交渉のカードに
6. 戦闘と駐留が混合する特殊状況についての研究が必要
7. 相手国の財政及び行政に思いやりを
8. 評価監察、実施について
9. 情報公開
10. パブリックディプロマシーは慎重に。大使館の専門的知見を活用する。
米国は、米国の国益のために行動する。
■Days Japan, 2018年1月号
軍隊という装置
戦闘という行為
その狂気から日常に帰る緩衝材のような場所としての駐留軍基地
そして、そのような狂気にさらされる基地の町。
自分ことがテロリスト