文化力 日本の底力
川勝平太、ウェッジ、2006
2967冊目
著者の勤務先は国際日本文化研究センター、日文研。
世界の人口増加の表はよく見るけれど、日本の人口増加の表はあまり見ない。もちろん、世界の傾向と同じなのだが、平安時代に644万人と聞くと、寂しさが募る。22
江戸初期は1227万人で江戸の半ばに3128万人になり、その後は明治まで横ばい。明治になって、昭和までに倍、そして、戦後から今までで、また倍。
文化の力を「女」「美」「森」「文化力」で読み解いていく。
女性的価値は平和と生命を重んじる。日本が平和な時代には人口は安定する。
象徴天皇制は平安時代に成立し、「権力」と「権威」が分離した。江戸時代に権力はさらに分化し「権力」から「所有」が分離した。権力の基礎は財力。土地から切り離された武士が権力を握る。マネジメントに特化。53
明治維新は士民革命。
西洋へのキャッチアップが終わったのが1985年。G5のプラザ合意。円高で日本の輸出が抑制される。
そして、地球環境という「美」の価値化の時代へ。
真善美の追求の段階が西洋とは異なる。しかし、地球という「美」で一致を見れば、西洋と日本は共存しうる。
1992年の地球サミットは「森」のルネッサンスでもあった。
西洋の資本主義は奴隷制によって発達した。
エリック・ウィリアムズは黒人だったが、優秀だったので、大学院まで奨学金で進む。しかし、イギリスでは職を得られず、やがて母国トリニダード・トバゴの独立運動を指導する。312
アフリカでは人口の1/3が奴隷にされるというような事態であった。徹底的に破壊された、その後に残っているものを、償いとして、文化を取り上げている。
新大陸でヨーロッパ人は極悪非道なことをした。絶滅に至った場所もあったのではないか。そして、そこにイギリス人がトップ、次にスペイン人、最下層に現地人という階層制も作った。
そのトリニダード・トバゴ出身のエリック・ウィリアムズが資本主義と奴隷制の関係を喝破した。
梅棹忠男、入江隆則、三浦雅士、伊東俊太郎さんらとの対談も収録。
ポスト東京時代のアジアとの競争時代。明治維新に匹敵する日本改革が求められている。