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いのちに共感する生き方 人も自然も動物も

いのちに共感する生き方 人も自然も動物も

野上ふさ子、彩流社、2012

2961冊目


動物会議'92の縁で、何回かご一緒した方。誠実で、熱意に溢れる方だったが、20121010日に亡くなったと、WiKiにある。1949年生まれとあるから、まだ63歳だったのではないか? ショックだ。死因は乳がん。


https://ja.wikipedia.org/wiki/野上ふさ子


日本の「新左翼運動家」と紹介されているが、新左翼ってなんだ?!


この本は自伝。


新潟県六日町の代々続く農家出身。両親は教員経験者。

地域のリーダー格の家柄である。


わたしはいつ、文字を覚えたのかなあ。野上さんは物心がついた時にはすでに本を読んでいた、と。図書館に入り浸っていたと。


しかし、そんな生活の中でも、新潟県の六日町での6歳上の人が体験することは、随分違っている。


子どもの頃の記述の豊かさ、面白さが詰まっている。じっくり読む。


■2017年12月20日 追記

野上さんと言えばアイヌ語の達人。ポンフチ、小さなおばあさんというあだ名でアイヌの人たちからは呼ばれていて、本も出している。


大学に入学する前からサルトルなどを読む哲学少女だったんだなあ。学園紛争最中の大学に失望し、中退。1968年入学。


中退しても二年間は学費だと思って仕送りをしてくれと親に頼んで、東京暮らしを始める。図書館に通う毎日。そこでアイヌ神謡集に出会い、クマが語り、フクロウが語り、キツネが語り、トリカブトやカシワの木が語り、風や火や水が語る世界。近代に行き詰まりを感じていた野上さんは、この世界観に打たれる。1972年夏、シャクシャイン祭りが開かれるという北海道静内に渡った。


アイヌの人々は裏表なく、野上さんを受け入れ、家に招き、話を聞かせた。また、野上さん自身も彼らとともに生活することで、アイヌの人々がその頃置かれていた現実を見ることになった。


頃はアイヌブーム。登別に行けばアイヌの木彫りの熊が売られ、アイヌの踊りや歌が披露されていた。ものの姿には魂が宿ると考えるアイヌには、生き物の姿を写し取った木彫りなどは存在しなかったのに、彼らが生きていくための苦渋の選択がそこにあった。


静内ではアイヌはアイヌであることを隠すようにして生きていたが、生活の中にアイヌの文化や心は生きていた。しかし、観光地では、アイヌであることを前面に出しているのに、心も文化もそこにはないと、野上さんは感じ取った。


一方で、アイヌユーカラを語ることができる人を求めてテープに録音、書き写す作業。『アイヌ語の贈り物』にまとめられている。


1974年、いっしょに住んでアイヌ語も教えてもらっていた福嶋コハナさんというおばあさんの土地が近所の牧場主に奪われる事件が起こった。それは元々はアイヌ給付地として与えられたものであった。裁判。1979年、勝訴が確定。


取り戻した給付地にチセを建て、アイヌ文化の様々な手作りを体験する場にした。アイヌ語では「雨が降る」ではなく「雨が立つ」と言い、「火を起こす」のではなく「火を座らせる」という。それぞれの神様が主体的に動く様が言語に捉えられているのだ。そのことを踏まえて、ユーカラを日本語訳にして自費出版したところ、出版社から話があり、1976年に『アイヌ語は生きている』、1978年に『ユーカラはよみがえる』、1980年に『ウレシパモシリへの道』と次々出版。万物共存の世界。


1982年、コハナおばあさん、89歳で逝く。


その間にも、野上さんは1974年、シャクシャイン像破壊事件の冤罪で留置所に入れられたりもしている。太田竜さんとのつながりかららしい。新左翼運動かとWikiに書かれているのもそのせいか。


アイヌの文化や生活は自然とともにあった。しかし、その北海道を巡って見ると、時は開発の嵐。野上さんは自然保護運動に取り組んでいくことになる。


しかも、開発の波は北海道だけでなく、野上さんの新潟六日町の実家にも及んだ。関越自動車道の建設だ。


反対運動も虚しく、道路建設は着工。賠償金を自然の恩恵に報いたいと、1984年、エコロジー社を設立。


地球生物会議の活動を経て、動物実験反対。


なかのまきこさんとの出会いも、この事務所でだった。

動物園、ブリーダーと動物の権利のための活動へと広がっていく。


1996ALIVEの発足。


2010年がんの疑い。


2012210日、102歳の母を送る。


20123月、西洋医学での闘病打ち切り。生活の質を保つことを優先して介護保険でヘルパーなどを活用して在宅を続ける傍、緩和ケアを受ける。最終的に聖路加病院緩和ケア病棟に101日入院。


1010日死亡。


なんと、最後まではっきりと自分の意思を貫いた人であることか。


http://www.alive-net.net/aboutus/fuhou.html



by eric-blog | 2017-12-06 10:40 | □週5プロジェクト17
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