映画『否定と肯定』
ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ
デボラ・E・リップシュタット、恒友出版株式会社、1995
Denying the Holocaust, 1993
http://ericweblog.exblog.jp/237923490/
この出版物の中で、著者がホロコースト否定者であるデヴィド・アーヴィングを差別主義者、虚偽の証拠に基づく不適切な歴史学者と呼んだことに対して、アーヴィングがペンギン社と共に著者を名誉毀損で、イギリスで訴えた。
イギリスの法廷では、被告が原告の虚偽を立証する責任があり、それができない場合は原告が勝訴となる。
アーヴィングを相手にすることは、彼にスポットライトを当てることになるとして、それまで論争することも、議論の場に出ることもしてこなかった著者だが、この裁判は受けざるを得なかった。
ダイアナ妃の離婚裁判を請け負った弁護士とそのチームが裁判を引き受ける。
裁判の方針は二つ。
陪審員制ではなく、単独判事による審判に持ち込むこと。
ホロコーストの生存者や著者自身などのユダヤ人の証人は求めないこと。
アーヴィング氏が差別主義者であり、その著述が一方的な証拠の採用によってゆがめられたものであることを立証しようとすることに焦点を当てるためだ。
この映画は、ぜひ、数あるデボラ・リップシュッタットさんのインタビュー、スピーチ、TEDプレゼンテーションなどをご覧になってから見て欲しい。そうすれば、レイチェル・ワイズの演技のそこここに、驚愕すること請け合いだからだ。彼女がデボラに見えてくる。
単独判事による審判を勝ち取った時のちょっとした笑み
アーヴィング氏を証人に立たせながら、一度も目を合わせないやり方
歴史学者にアーヴィング氏が虚証していることを証明させる場面
そして、勝訴が決まった時にアーヴィング氏が弁護士に握手を求める場面でその差し出された手を無視する仕草。
とても印象深い。
残念ながらハンナ・アーレントのプログラムとは異なり、プログラムにシナリオが含まれていなかったので、買わなかった。
ぜひ、この本を読み、デボラのリアルに触れ、そしてこの映画を見て欲しい。事実に基づいた映画として、その深みが増すこと、請け合いである。
■否定と肯定