あそびの生まれる場所 「お客様」時代の公共マネジメント
西川正、ころから、2017
2936冊目
最初に年譜が紹介されている珍しい本。時代の流れからいまの課題を知ってほしいということ。
子どもをめぐる環境がサービス産業化している。
わたし自身が行っている学習支援もそうだが、実際「子どもひろば」が企業によって運営されている。「放課後NPO」の説明会に参加した時から、その違和感は感じていた。
2012年「放課後等デイサービス」制度が導入され、多くの民間企業が参入。子どもの放課後は曜日によって細切れになりつつある。(実感!)
公共空間の劣化。
よくまとめられているので、長くなるが引用する。p.72からp.73
市場と制度によって「よりよい専門的なサービス」を調達することに私たちは成功した。しかしそれは、お客様としての自己認識のみを育て、孤立化を招き、苦情という表現しか持たない大量の住民を生み出した。それは言い換えれば、私は、この社会を変えることはできない、無力であるという自己認識を多くの人が持つにいたっているということを意味する。
自信が持てない子どもたちの姿に重なる。
高度成長以降の子どもたちは、2つのものを失った。一つは仕事、もう一つは遊ぶという行為である。かつては農業、自営業が多く、様々な子どもの仕事があり、具体的に子どもの手を必要としていた。しかし、生産(稼ぐ)と再生産(子どもの育つ場所)の場が分離されて、子どもたちは仕事、すなわち家庭や地域社会の中での役割を失った。代わりに大人たちが管理しやらせる時間、やってもらう時間が増え、自由に自分たちでつくる時間、すなわち遊びの時間を失った。
他方で、サービスとして子どもたちに仕事で関わる大人たちが激増した。
宮台真司さんは「郊外化」という概念で、この半世紀の日本社会の変化を「生活世界が空洞化し、システムに置き換わって行った」と説明している。73
生活世界とシステムの主従逆転現象。
そして、この本は、問題提起ではなく、コミュニティワーカーとしての著者がどのような実践をしているかを、めちゃくちゃいっぱい紹介しているのです! それはもう多岐にわたり、かつ脈絡ないので、まとめることなどできないのですよ。
ぜひ、ご通読あれ! 元気が出るよ。お客様をお客様で終わらせない工夫。というか、お客様じゃないんだし!