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ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ

ホロコーストの真実 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ

デボラ・E・リップシュタット、恒友出版株式会社、1995

Denying the Holocaust, 1993

2919冊目



映画の公開に合わせて文庫本が出版される予定で、現在予約受付中。


否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い 文庫– 2017/11/17

http://hitei-koutei.com

まだ見ていないけれど、レイチェル・ワイズかっこよすぎるよね。ヒュパティアも見たいなあ。


ホロコーストについての映画は多い。わたしが見たことがあるものだけでも

・シンドラーのリスト 2013

・戦場のピアニスト  2003

・ライフイズビューティフル 2014

・サウルの息子 2016

http://www.eternalcollegest.com/entry/2016/09/14/181059


TEDに著者自身による講演がアップされている。20174月。

https://www.ted.com/talks/deborah_lipstadt_behind_the_lies_of_holocaust_denial?language=ja


最初、否定論を聞いた時、笑ったという。まさか。生き証人たち、そして傍観者たちが間違っていたと? 誰が間違っているのか? 実行者たち。


誰が「ホロコーストはなかった」とは言わなかった。


しかし、否定論者たちは研究所を持ち、研究紀要をだし、「歴史修正者」を名乗った。人種差別、性差別。


IHR Institute of Historical Revisioninst


fact, opinion, lies 事実、意見、嘘。  


1993年の出版以来、デイビッド・アーウィンがデボラを起訴したと、ペンギン出版社からの手紙が来た。


「囚人番号」のタトゥをバカにした男。証拠はでっち上げだと言った男。果たして、起訴に対して戦うべきか? しかし、裁判所で戦わなければ、彼が勝つ。


2004年、デボラたちが勝訴。

https://ja.wikipedia.org/wiki/デイヴィッド・アーヴィング


さて、図書館から届いた1995年の本。驚愕したことに、推薦をデーブ・スペクターが書いているではないか。著者もユダヤ人だが、デーブもユダヤ人。


デーブさんは「PC」についての揶揄的本も翻訳出版している。笑いがお好き。こんな真面目な本の推薦のことばを書いているとは・・・。雑誌『マルコポーロ』に掲載されたホロコースト否定説とその後の経緯も紹介している。


本当に真面目な本。


否定論者たちは、目立ちたいからやっているだけ。取り上げること自体が彼らを喜ばせるのだと。だから、デボラの本は、「研究」書なのである。「否定論者たちとはどのような人々であるか」「否定論とはどのように作られているか」を明確に示している。

そして、そのような議論を受け入れる社会のもろさを、同時に描き出しているのだ。


本書では「南京大虐殺」否定論の存在も紹介されている。59


デボラは、否定論者たちは言論の自由を盾としてではなく、剣として用いているという。84


「歴史は、理性とは無縁の偏見という神話的な力と戦う時、いつも不利な立場に置かれ。しかし、諦めてはならず、それでも戦わなければならない。」89


社会に充満している毒気に警鐘を鳴らす「炭鉱のカナリア」のような存在だ。


1950年代、まだ記憶が新しかった頃、ラシニェがやったこと。

生き残りの証言の信用性をなくす。ナチスの残虐性はナチスだけのものではなく、他の軍隊もやっている。ナチス(あるいはヒトラー)はユダヤ人を救おうとした。133


1973年に『600万の詐欺』をまとめたアップは、「基本八項目」をまとめている。219


1. 第三帝国のユダヤ問題解決法は移住である。抹殺ではない。

2. ドイツ国内の強制収容所でユダヤ人がガス処理されたことはない。

3. 行方不明になったユダヤ人の多数派ソ連の支配地で消えている。

4. ドイツで死んだユダヤ人は、スパイであったり破壊活動かであったりした。

5. でっち上げ論者に対する迫害こそが、ホロコーストがでっち上げの証拠だ。

6. 600万の数字の根拠はどこにもない。

7. 証拠を出さなければならないのは否定の非難者だ。

8. ユダヤ人学者ら自身が数字の上で一致していない。


もう一つのやり方が「ハーフトルース」。半分真実。大きな嘘にちょっと真実を加えたもの。231


下巻


IHRの意図はアメリカの自立。人種的純血主義。51


第二次世界大戦のニセ遺産。日本の真珠湾攻撃。69

第二次世界大戦は道義の戦いではなく、覇権戦争だったことを暴く。


否定論者は、ガス室の存在と構造にも疑問を投げかける。そんなに大量に殺すことができたのか?と。75


大学は狙われやすい。議論に対して開かれた態度が、どのような主張でもいい立てやすくなる。「対立する側が存在する」と考えるのだ。168


著者は対策をこのようにまとめている。


「無視はしないが、論争もしない。」192


彼らの自己宣伝に加担しない、巻き込まれない。

彼らは決して議論の「もう一方の立場」などではなく、誠実な議論の手段そのものを軽蔑しているのだから。194



最後に訳者は、「ヒロシマ否定説」をホロコース否定説と同じ論理とハーフトルースの内容で描き出してみせる。全てはフェイクだったのだと。227


その創作を笑うことができるだろうか。


ヒロシマ否定説と異なるのは、ホロコースト否定説が反ユダヤ主義と表裏一体であるからだ。


否定論者の金づるに、イスラエルに牛耳られる米国というのを嫌う人たちもいるということだ。


日本社会では第二次世界大戦中の強制連行、従軍慰安婦、関東大震災の朝鮮人犠牲者などについて歴史修正主義が相次いでいる。歴史学者らは反対しているが、ヘイトスピーチは声高に一般市民を萎縮させている。


上下巻500ページ超の論文によって身を守ることができる人はいい。そんなことができるわけもない庶民は、普段の日常生活で、「まともな対論」のように装われた言説に、どう対応すればいいのだ? アパホテルの従業員はどうすればいい? 自らの就職先を狭めることだけが選択肢ではないだろう。



by eric-blog | 2017-10-27 14:27 | □週5プロジェクト17
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