どん底 部落差別自作自演事件 高山文彦、小学館文庫、2015 2897冊目 犯罪と差別という意味では、『デフ・ヴォイス』にもその影はあるのかもしれない。しかし、こちらは実際にあった事件。 WiKiに頼るのも如何なものかと思うが、それほどに知られた事件ということ。 https://ja.wikipedia.org/wiki/立花町連続差別ハガキ事件 それについて、ルポルタージュしたもの。 この事件だけでなく、それ以前にもあった差別ハガキ事件が影を落とす。当事者の転勤で幕切れになってしまった後味の悪さが、関係者の心には沈んでいた。 いや、差別ハガキ、落書きなどは、犯人が特定できても、事象が収まっても、後味の悪い者なのだろう。犯人がわかったところで、差別の存在は社会的な者なのだから、モグラ叩きのように、ある事象を叩いたところで、どうなったわけでもない。 叩き方によっては、そのことによって偏見と「怖い」という印象とが強化される場合もあるのだから。だからと言って、ヘイトをのさばらせることはあってはならない。 事件そのものは、ある嘱託職員のところに舞い込んだ差別ハガキ。すわ、犯人探しと追求のための動きが部落の側では活発になる。 行政や役場の対応の遅さなども、糾弾、交渉のポイント。 高齢化する地域にあって中年で、半分公職のような立場にある彼は、地域の会計係という立場にもなっていく。そして盗難事件が起こる。 松本治一郎さんの人となりや行動規範そして教えなどが、リアルに何度も言及されるのが、運動の矜持とその難しさを示していて、他の書物によって触れる彼の姿よりも、しっくりと染み通ってくる。 被差別者、社会的弱者、経済格差など、社会的に恵まれない人に、どこまで松本氏と同じ矜持を、末端まで行き届かせることができるのか。求めることができるのか。苦悩する関係者の姿も、リアルだ。 一応、フェミニストとしてのわたしの立場で言うと、わたしは女性が「生き延びる」ためにどんな手を使っても、そのことでその人を判断することはしない。さらに「解放」に向かうための支援ならばしたいと思っている。 しかし、わたしは自分が弱い人間だと知っている。苦しい立場になったら、自分可愛さのために立ち振る舞って、なんの痛痒も感じないことを知っている。 だから、ここで「山岡一郎」さんと呼ばれている彼のことが、わかる。 結婚して苗字を変えて、それでもムラの、解放運動で勝ち取った安い住宅に住み続ける。ラッキー。部落でもいいことあるんだ。 やりそうな気がする。 そして、ムラに住む以上、ムラの中での住みやすさを求めて、解放運動に名を連ね、子どもを解放子ども会に入れる。支部長になったら、人からもちゃんと扱われるし、なんか、コネでいい職ないかしらと、旨味を求める。 やりそうな気がする。 差別ハガキを出し、事件をでっち上げ、事件と差別を告発する講演会で涙で語る。 わあ、やるかなあ。バレたら怖いでしょ? ここがわからない。 山岡一郎氏はやっちゃったのである。そして、ムラを出て行くこともできないのである。 家族には嘘をつき続けているのである。家族は彼を信じているのである。 わあああ、情けない男やなあ。なのだが、彼は差別者なのだ。加害者なのだ。 うまく立ち回りたい。人生、甘く生きたい。著者はすごく憤っているし、糾弾会でもみんな怒っているのだけれど、なんか、情けないこの男のことが、立ち上るんだよねぇ。それで生きていけるんだって。狭い世界でも。ああ、そう言うことも、地域共同体ではあるよなあ。ムラ八分にはしても、存在は許す、みたいな。いや、許すのではない。そこにあるのだ。許すという積極的な行動ではなく。 うわあ、すごいもん読んじゃったなあ。 2003年に始まり、2015年に執行猶予も終わった刑事事件。 ここは怒るべきなんだろうけれど。被害の当事者じゃないもんなあ。 こんな弱い人間が、どう生きればいいのか。 こ都合主義で、その場限りで、謝罪はするけど、行動は伴わない。 でも、そんな人、いっぱいいるんじゃないの? 事件には至らないまでも。 あれ? 今の政治家のメンタリティって、こんな感じじゃないのかな?
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| 2017-10-06 14:00
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