消費税が社会保障を破壊する
伊藤周平、角川新書、2016
2895冊目
2013年8月から生活保護の生活扶助日が引き下げられた。
2013年10月から老齢年金が引き下げられた。
2014年4月、消費税率が8%に引き上げられた。
2015年4月から介護報酬が引き下げられた。
2014年7月からは生活保護申請の厳格化、2015年7月からは住宅扶助費の削減と冬季加算の削減。
その間、実質賃金指数は2013年以来マイナス続き。
社会保障充実を名目に諸費税が増税されたのに、なぜだ?
消費税の本質を明らかにし、消費税によらない社会保障財源を探る。本書の狙いだ。
第5章に消費税の問題点がまとめられている。
1. 強い逆進性 188
国税収入に占める消費税の割合、29.4%。これは20%取っているイギリスやフランスより多い。(25%程度) しかもイギリスでは食料品課税はゼロだ。
(2015年決算額では29.1%)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000415647.pdf
2. 滞納を招く 189
国税のあらゆる品目でもっとも滞納が多い。滞納額全体の53%。消費税収入全体の3.4%。
力が弱い側が負担を強いられ、滞納が多くなる。
前年に消費税が5%に引き上げられた1998年は、自殺者が年間3万人を超え、滞納が急増した。191
3. 貧困と格差を拡大
輸出大企業に膨大な還付金をもたらす消費税。雇用破壊税。
輸出企業は、最終消費者が国内ではないため、製品になるまで支払った消費税分を払い戻し税として還付を受ける。192
非課税の医療機関は、医療機器の購入などに支払った消費税は戻ってこない。
なぜ雇用破壊税か。
企業が雇用の外注化をする。正社員への給与は「仕入税額の控除」にならない。
4. 非関税障壁
消費税に伴う輸出還付金制度のないアメリカにとっては、非関税障壁と捉えられ、貿易摩擦になる。196
5. 軽減税率の導入
逆進性対策なのか?
税収減となるため税率が上がる。ヨーロッパ並み、20%に。202
陳情合戦の横行と特定分野への補助金化 204
6. 社会保障財源としての問題点
消費税を上げたことで消費が冷え込み、デフレ経済に逆戻り。
増税に平行して、法人税減税。これでは税収は増えず、財政再建には繋がらない。
■輸出戻し税についてはこんな説明も。
https://note.mu/twitthal/n/nf9f1ac140dae
でも、こんな主張も。全商連。
http://www.zenshoren.or.jp/zeikin/fukouhei/121022-01/121022.html