もうろうをいきる
西原孝至監督、シグロ、2017
2878冊目
指点字というのにも驚いたが、触手話というのにも驚かされる。
東大の福島智さんは有名だし、彼のテレビ番組を見て、わたしももうろうの人々のコミュニケーションに触れたのだ。
http://ericweblog.exblog.jp/23867749/
月曜日の手話教室で紹介されて、ポレポレ座にでかけた。先週は『ひいくんが歩く町』を見に来たのだった。すごく良かった。
『三里塚のイカロス』のカメラマン、加藤孝信さんが、この映画も撮っていると聞いたので、それもあって、15日までだけの滑り込みで見に来た。16日からは渋谷のアップリンクでの上映が決まっている。
なぜ、神様は、音を失った人たちから、視力も奪っていくのだろうか?
そして、なぜ、光はだんだん失われていくのだろうか?
人間って不思議だなと、つくづく思う。
光と音のない世界で、「言葉」なのだという。世界を形作るのは。
触手話で語りかけてくれる人に対して、ものすごい、満面の笑顔で、手に向かっていく。
手を探り求める。そこに手があると、ホッとした表情で、まだ何も喋っていない間にも、何かがそこに生まれている。
いきる
ということは、食べて、寝て、くそして、風呂入って、以上のものなのだと。
人間ってすごいなあ。
でも、女の人は、そんな中でも食事を作り、そして、なんと介護もして来たのだという。
驚くね。そして、女の方が、幸せに近いんだなあと、思った。その代わり、遠くの幸せを求める意欲と力が弱くなるんだな。きっと。
■東京新聞連載
2017年9月20日