「テロとの戦い」を疑え 紛争地からの最新情報
西谷文和、かもがわ出版、2017
2877冊目
フリーになってから13年目の「テスト」のようなものだと言う。この本は。
テレビ朝日などで戦争の悲惨さを伝えて来た。2006年度「平和協同ジャーナリスト大賞」受賞。
この4月にまとめられた米国議会報告書がある。
https://fas.org/sgp/crs/natsec/RL32492.pdf
米国の兵隊の歴戦における死傷者数をまとめたものだ。
Wars covered include the Revolutionary War, the War of 1812, the Mexican War, the Civil War, the Spanish-American War, World War I, World War II, the Korean War, the Vietnam Conflict, and the Persian Gulf War. Military operations covered include the Iranian Hostage Rescue Mission; Lebanon Peacekeeping; Urgent Fury in Grenada; Just Cause in Panama; Desert Shield and Desert Storm; Restore Hope in Somalia; Uphold Democracy in Haiti; Operation Enduring Freedom (OEF); Operation Iraqi Freedom (OIF); Operation New Dawn (OND); Operation Inherent Resolve (OIR); and Operation Freedom’s Sentinel (OFS).
1775-83年の独立戦争からずっと、南北戦争なども含め、近年の中東における作戦まで。
わたしが注目したのは9.11以降のアフガニスタン侵攻、イラク戦争なのであるが、驚いたことに、
「米国軍は、アルカイダを殲滅するためにOEF(不朽の自由)作戦を行い、2346人もの戦死者を出しました。2749人がニューヨーク、ツインタワーへの自爆攻撃によって亡くなったことに対する報復として、兵士がその同数に当たるほどの数、死んでいるのです。傷害者数は2万人超と、ニューヨークでの数を大きく上回っているのです。」(ERICニュース558号より)
作戦の死者数が、9.11の死傷者数を上回った時、2014年、この作戦は変更され、米国軍の死傷者数は、それ以降激減します。
では、その間、どんなことが米国からの攻撃下におけるイラク、アフガニスタン、シリアなどの戦闘地で起こって来たか。そして、南スーダン、リビア革命など、著者の取材は広範囲におよぶ。
空爆こそが「テロ」なのではないかと「テロとの戦い」の悪循環によって、一般市民が殺されていく状況に、著者は言う。
そう。米国兵士が死亡することのない戦いは、不正確な空爆によって一般市民の命と暮らしが奪われる戦いに変貌していっているのだ。すでに兵隊vs兵隊が対峙する「戦場」などないのだ。
大国のダブルスタンダード、隠された不都合な真実、奪われ続ける命。
見つめることしか、できないのか。知らないよりはマシなだけでしかないのだが。