お菓子放浪記

お菓子放浪記

西村滋、講談社文庫、2005、単行本1976

2865冊目


映画『エクレール・お菓子放浪記』

https://www.youtube.com/watch?v=8XDoKk4YGb0


浮浪児

http://waiwai3.exblog.jp/23142606/


終戦直後、日本でも戦争によって孤児になった子どもたちは悲惨な状況で生きていた。いま、世界で難民化している子どもたちも、同じような境遇にあるのだとしたら、わたしたちの社会は何を学んだのだろうか?


もちろん、国際支援も大切だ。しかし、もっと根源的には家族を奪われないことの方へ、わたしたちは努力すべきなのだ。


武力は戦争を抑止しない。外交努力、民間交流、積極的対話のチャネルを開くこと。そして、そのような努力を支持する市民力を高めるための教育が求められているのだ。ナショナリズムや自民族優越主義、排他主義が国際社会の共生の未来を脅かすことは間違いありません。教育のあり方に、そのようなメッセージが入り込まないようにするだけでなく、積極的な共生の価値観と行動を、わたしたちみんなが習熟していくこと、実践し続けることを、教育的な課題としたいと思います。


そのような戦争孤児の問題だけでなく、様々なことを考えさせられるとても良い自伝的な小説だと思いました。


孤児として刑事に捕まった時、買ってくれた菓子パン二つ。十把一絡げで検挙される頭数の扱いではなく、一人の人として、私にくれた好意の象徴としてのお菓子。


少年は、お菓子に愛を見出す。そして、それを励みに収容施設でも、年に二回のお菓子を楽しみにする。


お菓子を独り占めして食べても幸せではない。

偽物のお菓子をもらっても嬉しくない。


お菓子は人を幸せにするものでなければならないんだ。


そのこだわりが少年の人生を、一つのしっかりとした価値観に導かれたものにしていく。


昨年、2016521日に亡くなった著者。1925年生まれ。我が父と同い歳かあ。


母に言わせれば、まだキャラメルを食べたことがあり、それを懐かしむことができる世代だそうだ。


小説の中でも、だんだんお菓子がなくなり、代用品すらなくなっていく時代が描かれる。


1930年に生まれ、1931年満州事変からの15年戦争と生まれてからずっと戦下を生きた母には、「お菓子」という希望も記憶も、ノスタルジーも、喪失感もなかったのだ。



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by eric-blog | 2017-08-21 11:02 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)
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