猫の帰還

猫の帰還

ロバート・ウェストール、徳間書店、1998

Blitzcat, Robert Westall, 1989

2856冊目


猫が2400キロも飼い主を追って移動したという話がある。犬ではなく。


Lord Gortゴート卿、フランスに派遣されたイギリス軍の司令官の名前をつけられた猫が飼い主である空軍パイロットの後を追って、1940年ドイツ軍の空襲が激しさを増すイギリス各地を巡る旅を通して、戦下の生活を描いて行く。


日本では19453月から8月にかけての各地を襲った空襲と原爆投下の悲劇が語られるが、1940年に始まるドイツの空爆の激しさは、イギリス人が語り継ぐことでもある。


軍に接収された家が吹き飛ばされた時、LGは後を追ってきた夫人を危機から遠ざけた。


コヴェントリーの納屋が焼夷弾によって火災にあい、町中から避難民が溢れ出す。出産したばかりのLGはその子育ての姿、健やかさで、馬車屋に生き直す勇気を与える。


一匹の子猫だけを連れたLGは真冬の雪に苦しめられながら、子猫に同情した作家に救われる。作家の夫は戦死したばかり。彼女は投げやりになり、食べることにも意味を見出せない。しかし、生き物の存在が、彼女に食べ物の配給をもらいに行かせる。


子猫を残して、LGは空軍基地への道を辿り続ける。


不発弾処理をしている爆弾班が、時限装置によって炸裂した爆弾によって吹き飛ばされる。3メートルのところにいたLGは聴力を失いつつも生き残る。


空軍基地にすでに飼い主はおらず、その痕跡も辿れない。聴力を失っている猫は、エンジン音を恐れることなく、ドイツへの空爆に向かう爆撃機に乗る。


黒猫は幸運ももたらすが、その不思議な力頼みが高じて、兵隊たちの士気に影響しだす。最後の搭乗となった出撃では、被弾し、ビシー政府のフランス領に。連合軍に協力する人々に守られてスペインを経由して、戦争に参加していない中立国であるポルトガルから護送された爆撃士とともにロンドン近くの空港に帰還する。


猫の旅路を通して、戦争の様相を多面的に描きつつ、「生きる」という普遍的な価値を「猫はイギリス人かドイツ人か気にしない」などの表現で示している。



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by eric-blog | 2017-08-12 10:57 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)
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