【新版】戦災等による焼失文化財 20世紀の文化財過去帳
文化庁編、戎光祥出版、2003
2735冊目
昭和38-39年に編纂された「もし残っていたら国宝に指定されていただろう」重要文化財で、無くなってしまったものを、できる限りの史料とともに紹介したもの。
沖縄の守礼門などの焼失日が「推定」になっていたり、所有者が渋谷区南平台町の尚氏だったりなど、興味深いことはたくさんあった。
大きく美術工芸品部門と城廓建物部門に分かれていて、前者は71点中26点、後者は99点中68点が戦災焼失である。
もともと、第二次世界大戦の空襲でどれほどの文化財が失われたのだろうかということを知りたくて調べていてこの本に出会ったのだけれど、多くの城廓や徳川ゆかりの東照宮、神社なども失われているのを見ると、戦前という時代は明治の廃仏毀釈の荒波(仏閣の1/3が失われたとか?)を超えてなお、江戸時代の匂いが残っていたのではないかと思えた。
8月9日に長崎で失われたもののリストを見ると胸が痛む。って、自分の誕生日だからなんだけど。
凄まじい嵐の中、親たちは失ったものについては多くを語らず、今の時代を築いてきたのだなあと、前向きの力と、その力を引き出したものは何であったかに思いを馳せる。それは無くしたものへのどうけいでは決してなかったはずだ。
次を作る力、それこそ今わたしたちが発揮すべき力だ。「未来への公共」は始まったばかりだ。