産業医が見る過労自殺企業の内側

産業医が見る過労自殺企業の内側

大室正志、集英社、2017

2848冊目



産業医科大学という産業医育成専門の大学があることも知らなかったなあ。

企業規模によって、非常勤なり常勤なりの産業医を置くことが労働安全衛生法で決められている。

昭和47年の法律であるから、1962年。高度経済成長目前、日本の産業が伸びた時期と言えるだろうか。当初は、身体的健康管理が中心だったのが、この本の著者がそうであるように、「精神科医」を目指すか「産業医」を目指すかというような選択肢に上がるほどに「心の病」についての知見が求められる職業になってきているようだ。


とはいえ、元々の出自が出自であるだけに、どこまで企業や産業医本人にその意識があるかどうか、そして体制的にも予防的に発見、手立てを打ちえると思っているかは疑問だ。


医師免許を持っていても、産業医になれない人たちリストというのがあり、「法人の代表」など企業の利害に関わる側の役職が並ぶ。さもありなん。


著者は高橋まつりさんの自殺についても予防できたのではないかという。企業付き医師がどこまでの情報を持ちえるのかは知らないが、就労時間などの基本情報は持っているはずだ。大企業のほとんどに産業医がいることから考えると、からだから心へのシフトがあまりできていないのではないかとも、この本を読んでもなお疑問は拭えない。


本人も言うように、「企業と労働者」どっちの立場に立っているのか? どちらを向いて仕事をしているのか、と言うことになるのだろう。


ものごとの体質変換にとって大切なのは「価値観」や「ビジョン」であるが、日本の法律は「手続き法」的色彩が濃くて、「理念」が弱いし、理念が書かれていても、手続きに押されるから、だめだなあ。


産業医の内側という本を書いた方が、面白いんじゃないか?



[PR]
by eric-blog | 2017-07-24 10:29 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)
<< 相模原事件 一年が経ちました。 デザイン・イズ・デッド? >>