ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女

宮田律、講談社、2017

2829冊目


一方はイスラム過激派に襲撃され、重症を負ったが、その後イギリスで治療を受け、国連でスピーチし、ノーベル平和賞も受賞。

一方は、アメリカ軍による無人機攻撃によって祖母や親戚を亡くしたが、その話をアメリカで話しても聞いてくれない。


 著者はこの格差をアメリカ軍が戦っている相手であるか、それともアメリカ軍の攻撃によるかという違いなのだという。わたしもナビラさんが来日した時の学習会に参加したが、ちょっと違う印象を持っている。ナビラさんが攻撃されたことと、ナビラさんの主張は無関係である。しかし、マララさんが攻撃されたことと、マララさんが学校に通い続けて居たという行動やその行動の背景にある主張とは関係がある。だからこそ、マララさん個人が語り、その主張が人を動かすのだ。


それに対してナビラさんは、無人機攻撃というアメリカ軍の無差別殺人の犠牲者の目撃証人でしかない。11歳の彼女には、本人の状況理解も、主張はない。それがわたしが話を聞いた時の印象だ。だから、この本のタイトルにあるような対比にはうなづけないものもありつつ、しかし、わたしにとっては「無人機攻撃」の問題は大きな関心事であるので、ぜひ、ナビラさんの物語は紹介したいのである。


そして、その物語はしっかりと聴かれるべきなのだ。


この本は、とても丁寧に今の中東、そしてインド・パキスタンの状況に至る19世紀ごろからのヨーロッパ、特にイギリス、フランスなどの大国の干渉とその帰結についてまとめられている。かの有名な『アラビアのロレンス』というオスマン帝国とアラブ人の戦いにイギリス人が参加して居たことの意味。そして、レバノンのシリアからの分離など。


日本も大国主義から逃れて「国民国家」を確立しようともがいて居た時期のことだ。


その頃のイギリスって、何? って感じだけど。簡単にまとめることなどできないので、詳細は、本を読んでください。大国主義の惨さと言う印象だけが残る。


そして、近年。そのような介入役はアメリカに席を譲ったのか。


ナビラさんは言う。「わたしたちを攻撃した無人機の弾丸は一発で850万円ほどもする。それだけのお金を教育や病院につぎ込めば、よっぽどこの地域は安定するだろう」と。


ブッシュ政権の時に起こった9.11以降、アメリカ軍は、中東での戦争に地上軍を送り続けた。しかし、その犠牲の大きさに、オバマ政権では地上軍は撤退、無人機攻撃に切り替えた。


無人機攻撃で殺されているのは戦闘員や軍事工場、軍事施設だけではない。多くのシビリアン、一般人が巻き込まれているのだ、ナビラさんの故郷のように。


無人機攻撃をこれ以上拡大させてはならない。それは贅沢な戦争どころの騒ぎではなく、機械やAIが人を殺す時代に道を開いてしまうからだ。戦争は人間の行為の中でも非人間的なものだが、それを脱人間化することの先を誰が知ることができるだろうか?



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by eric-blog | 2017-06-29 11:58 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)
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