生命と風景の哲学 「空間の履歴」から読み解く
桑子敏雄、岩波書店、2013
2815冊目
3.11に突き動かされてまとめられた論考。
社会的合意形成にも関わる「地を這う}哲学者による風土論。
震災の中の歴史と科学
プレートテクトニクス理論に遅れをとった日本の科学が、原発の安全神話に連動していたことを否定することはできない。13
科学は歴史的存在である。
複数の学説の論争の存在こそが科学的。14
パニックを起こすので情報を与えないというパターナリズムに驚いた。15
土地に残された記憶を辿ると
近代的精神は、隠蔽されていた自然のパワーが突如現れたとき、それを「想定外」と語った。その言語行為は、日本の歴史の中で祖先が直面し、備え、対応して来た精神の忘却の表現そのものであった。43
全国各地を歩き回って来た著者のあげる例は興味深い。
佐賀平野の西の端、白石町川津地区、縫ノ池。
1960年代に地下水をくみ上げすぎて、涸れてしまった。40年を経て、農業用水の汲み上げが減った結果、湧水が戻った。
40年の間、開発されていなかったのだ!
同じく佐賀県。三千石堰の知恵とダムをめぐる賛成反対の対立。
そして、南相馬の避難と補償をめぐる対立は「みんなのもの」であるはずのふるさとの復興を難しくしている。254
神話が暗示する地域の自然環境の特性。荒ぶる神と荒ぶる自然。突発性と季節性。