林業がつくる日本の森林
藤森隆郎、築地書館、2016
2721冊目
著者は国民から森林が遠いという。
日本は不思議な社会だ。
周りを海に囲まれているのに、海は遠い。
7割近くが森林なのに、森が遠い。
ニュージーランドを訪れた時、海の近さに驚いた。オークランドの住民の1/3がヨットないし何らかの船を持っていた。ボートづくりはよくある趣味だったし、気軽に海に出ていた。
日本ではプレジャーボートは高くつく趣味であるし、航行の規制も厳しい。
翻って山である。成人の10人に一人が山歩きが趣味という中にあって、森林に関わる政策から国民は遠いのだ。
環境に関する意識調査をすれば8割が関心がある、何かしたいと答えるのに、この遠さはどこから来るのだろうか。
著者はこレまでの工業中心の経済や社会から、自然相手の社会へとシフトすべき時だという。
国民の関心が高まらなければ、森林の多様な機能が評価されない。
生産林としての森林経営は経済的に限界にきているのだ。経済林としても生活林としても。
環境林としての森林を評価すること。
また、一方で良質な材の生産がきちんと評価されることも、森林の意地のためには重要だ。
人材育成の制度もない。
林学科すら消失してしまった。
なんだかなあ。この国は自らの特徴と良さを、どんどん無くして行っている気がする。そして、それは、どこか「経済」一本やりのせいなのではないか?
専門家一人が気炎を吐いても事態は変わらないよなあ。