雁屋哲作、シュガー佐藤画、遊玄社、2016 2664冊目 この本は、雁屋哲さんが「2年C組 特別講義」として出版したものの改題。400ページを超える大部のものが上下二巻。漫画という扱いらしいが、福澤諭吉本人のものも含めて、どうしてどうして文章が多い。しかも、お高い。 実は、2010年に出された杉田聡さんの本もすでに紹介している。 ■福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集 国権拡張脱亞の果て 杉田聡、明石書店、2010 http://ericweblog.exblog.jp/19343593/ 2014年1月のブログ記事だ。 「天は人の上に・・・だが、人の世の中には上下がある。わたしはイギリス人を足下にしたい。 端的に言ってしまえば、全編そのためにはどうしたらいいか、で満ち溢れているのである。謀略オッケー、戦争どんどん、韓国なんて道具でしかない。ひぇーーーー!」が、一読、わたしの感想であった。 続いて、同年に行われたIWJによる安川寿之輔さんへのインタビューも紹介している。
http://ericweblog.exblog.jp/20216658/ そして、この前紹介したのがその二人とさらに雁屋哲さんを繋いだ三人の出版記念記者会見と講演会。いずれもIWJで見ることができます。 ■さようなら! 福沢諭吉 日本の「近代」と「戦後民主主義」の問い直し 安川寿之輔、雁屋哲、杉田聡、花伝社、2016 http://ericweblog.exblog.jp/23436684/ 福澤諭吉の大本願が「日本の国力をあげる、経済を発展させる」にあり、そのために、天皇制は、国を「民権」だなんだと争わせることなく、まとめ上げていくのに好都合であると、天皇制を功利的に観ていること、また、戦争も手段として否定しないこと、圧制は自分がやる分には、気持ち良いことだと明言していることなどが、次々に、彼自身の著作によって明らかになっていく。 2年C組での歴史の授業の内容に対する保護者らからのクレームから始まった勉強会。その議論は、保護者や生徒にも開かれているのだが、発言が活発で、左右、革新保守のいずれも取り揃えた感じ。 羨ましい! 下巻では、丸山真男さんが果たした役割についても言及。 しかし、わかりやすいのは杉田さんがまとめた『時事新報』の論説だろうなあ。時代的にも福澤諭吉晩年であるし。その変節を追う必要がない分、わかりやすい。 その中で、福澤諭吉さんは、明治維新から日清日露の戦争、不平等条約の改正などを経て、イケイケどんどん。 時代の空気に敏感な慶応ボーイだったんだねぇ。 さて、話はミンピ暗殺、台湾侵攻などにも進み、彼の「イケイケどんどん」ぶりがあぶり出され、福澤諭吉心酔派の保護者たちが腹を立てて討論会から離脱するという状況になり、そこで生徒たちが、「議論を続ける」ことを提案。学習会は続行となるのだが。さてはて、現実の社会ではどうなることか。 というのも、「政治的なパワーゲームだ」と歴史のことを思って歴史教科書問題に一家言している本では、「福澤諭吉」をどれほどのページを割いて取り上げているかによって評価しているということが実際に起こっているのだ。 http://ericweblog.exblog.jp/23451233/ 安倍首相が「一身一国」なんて引用しているだけの問題ではなくなるだろう。 専門家が認める史実すら、教科書や副読本から抹殺するようなローカルな動きが次々と展開されている。 そして、問題は、中沢けいさんも指摘するように「弱い部分を叩いて、嫌がらせする」というその態度と方法なのである。ビビらせる。 雁屋哲さんが描いている学園のような議論の雰囲気を、現実社会の中で、作り出す必要がある。 提灯持ちのメディアは言わずもがな、ビビる行政は、権利の擁護機関ではなく、権力の出先機関に簡単になってしまうことは想像に難くない。 ローカルがこれほど恐ろしい状況になっていること、しかし、また希望もそこにあることを、2年C組服別勉強会は示してくれている。
『福沢諭吉のアジア認識 日本近代史像をとらえ直す』高文研、2000 以下の全集すべての著作から、発言内容を分類、頻度をチェックしているのだ! 『福沢諭吉全集』(慶應義塾編、岩波書店刊、1969-1971、全21巻、別巻1 http://kenkyuyoroku.blog84.fc2.com/blog-entry-869.html もおおお、この一ページに詰まっているって感じ!
『増補改訂版 福沢諭吉と丸山真男』岩波書店、2016 、原著2003 ショックだった部分を引用します。教育に携わる者として。 「遠山茂樹は『福沢諭吉』(東大出版会、1970年)の最後「VIII 評価の問題点」において、「彼は近代民主主義者ではなかった。アジアの諸民族の平等と独立との主張者ではなかった。この点の指摘を曖昧にすることはできない。しかし、彼の著作は、本人の意図をこえた役割を、当時にあっても、後代にあってもはたした。」と書いて、同書の最後を「福沢の著作を国民の古典たらしめたものは、自由・平等・独立への国民の自覚にもとづく読みかえ、彼の実体をこえた読みこみの力であったと、私は結論したいのである。」(265~)・・・これにたいして山住正己も同様に『福沢諭吉教育論集』(岩波文庫、1991年)の「解説」文の最後で、遠山の右の文章を引用して、「私は、いまでも遠山のこの結論に同感である。」と書いているのである。」271 (今の現実は)「実体をこえた読みこみ」「読みかえ」という安易で安直な政治主義的な「研究」に根源的な反省を迫っているのではないか、というのが私の問題意識である。」271 安易な学問研究のあり方も戦後民主主義の破綻と崩壊の一因をなしているのではないか。 教育学の泰斗ともいうべき人の罪なるか 福沢諭吉が持ち得た力と同じ構造だったのだ。
舘野晳編集、明石書店、2002 この本で福沢諭吉さんを紹介しているのは安川さん。 伊藤博文さんについては高大勝(ゴデスン)さん。翻訳家。が紹介している。もちろん、批判的に。
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| 2016-12-12 14:04
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