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「積極的平和主義」は紛争地に何をもたらすか?! NGOからの警鐘

「積極的平和主義」は紛争地に何をもたらすか?! NGOからの警鐘
谷山博史、合同出版、2015
2610冊目

“proactive contribution to peace” だったら「平和への予防的介入」といえばいいのに。何もガルトゥングさんの用語を盗むことはない。先人の積み上げに対するリスペクトのなさは「反知性主義」と謗られても仕方ない。

国際社会が「国家安全保障」から緒方貞子さんらの提唱で「人間の安全保障」に向かって努力している時、武力による予防的介入によって国益を守ろうとする日本の行動は理解しがたい。

『ある戦争』を観た。初日で上映後のトークショーがあった。JVCの谷山さんとJVCアフガニスタンのザルビルさんが出た! なんて豪華な。

この映画の話を最初にしよう。【ネタバレ】

デンマークはアフガニスタンの治安維持のために国連PKOに軍隊を送ってきた。彼らの役割は地雷が埋められていてタリバンがいつ攻撃してくるかわからない地域で、市民を守り日常生活を取り戻させることだ。そのために割り当てられたエリアで巡視と地雷や遠隔操作爆弾除去などの活動を行うこと。地雷除去には地域の人々の協力も得ようと努力する。

しかし、巡視中に誤って地雷を踏んで死んでしまう兵隊もでる。なぜ、デンマークがこの活動をしなければならないのか? 動揺する兵士の士気を高めるために、隊長は自ら巡視に加わる。

隊の前に男が現れて懇願する。娘が火傷で苦しんでいる、助けてくれと。

警戒しながらも家に行き、治療する隊。感謝する男。

しかし、その後、その男は家族を連れて基地までやってくる。夜にタリバンがやってきて、外国軍との関係を問いただされた、タリバンに入れと脅された、このままでは殺されると。

翌日救援に向かうこと、タリバンを一掃することを約束して家族を帰宅させる。

翌日、村に向かうと、その男の家族は皆殺しにされていた。さらに家囲いの外からタリバンの攻撃が始まり、一人の兵士が負傷する。時間がない中、隊長は空爆を依頼する。攻撃地点はと問われ、第6区を指定する。PID攻撃認証はしたのかと確認されるが「していない。しかし、今は急ぐのだ」と叫ぶ。

空爆機は2分で到着し、ヘリコプターに乗せられ後方に送られた兵士は一命を取り留める。

一週間後、法務官が軍を訪れる。「民間人に対する攻撃」の罪で隊長を起訴すると。

即刻帰国命令が出され、隊長は家族の元へ、そして裁判所へ。

イギリス軍警察から提供された第6区の民間人殺害証拠写真。11人が犠牲になったという。PID攻撃対象確認の有無が法廷で争われる。証拠として出された通信兵のひたいに取り付けられていたカメラの映像、副官や兵士たちからの証言。誰がPIDをしたのか確認が取れないまま、隊長の立場は不利なものになっていく。

負傷兵をず早く移送するために援護を受けようとすれば、どこか攻撃地点を早急に指定する必要があった。誰が言ったかはわからないが、確認したのだと、弁護士は主張するようにアドバイスする。

苦悩する隊長。自分がなぜ第6区といったのか、確信が持てない。偽証はできないという彼に、妻は「これからを考えて」と迫る。

息子が言う。「これからはどこにも行かない?」と。

息子を寝かせつけ、上掛けをかけてあげた時、足首だけが見える。あの家族の殺された男の子の足首の映像がかぶる。

なんのために戦っているのか。
民間人の活動を守るためにと言いながら、民間人を爆撃で殺してしまった。
デンマーク兵士の命には替えられなかった。

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上映後のトークショーで、サルビルさんは言う。「兵器を持ち込んで地域に平和をもたらすことはできない」と。アフガニスタンの文化も理解せずに、アフガニスタンの平和に貢献することはできないと。

本は後藤さん湯川さん殺害事件からはじまる。

誘拐がわかった後、政府は「イスラム国」との戦いに2億ドルの人道援助を行うと発言、ODA大綱を変えて「他国の軍に対する援助を解禁」するとした。

そして、谷山さんがトークショーで触れた事例が、本では詳細に述べられている。丸腰のNGOが積み上げてきたことが、覆されていく現実。

第5章は「日本にはどこの国にも果たせない役割がある」!

外交資産
国連改革
市民活動
コミュニティ支援

日本には担える役割がある。私も同意する。歴史的にも、そして文明的にも、日本は重層的な国であり、そのことが架け橋となる特性を作り出しているのだ。


日本が目指すべきこと。あとがきにかえて。
暴力に暴力で対抗する方法に未来はない。
誰かが暴力以外の道を示すことが、全ての人の希望になる。
JVCがサルビルさんに希望を見せたように。

デンマークは苦しんでいる。武装して地域に入ったせいで、地域とも繋がれないでいる。
ドイツもそうだ。

他国の紛争に介入しようとする時、情報収集能力と判断能力は不可欠である。
それが例えば米国軍からの情報提供によるだけの判断であるなら、それは危ういと言わざるを得ない。

自衛隊を派遣すると言うことは、軍警察機能も独立して持つ必要があると言うこと。

その覚悟と準備が、日本にあるのだろうか。

■2016年11がつ13日 谷山さん、日曜討論に出席。柳沢さん、「その時に銃を持っているかいないかが信頼関係にとって大きな意味をもつ」と。

http://www4.nhk.or.jp/touron/5/

by eric-blog | 2016-10-09 13:35 | □週5プロジェクト16
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