ERIC NEWS 505号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年9月4日

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ERIC NEWS 505号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年9月4日
ESDファシリテーターズ・カレッジ! すべての学びを参加型で!
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

 去年もご協力いただきましたが、今年も熊本倉庫の整理縮小に伴い、発見された未整理在庫処分を行います。『地球のみかた(生徒用)』 40冊入りを前回同様箱受け限定で、送料手数料込みで3000円でご協力ください!

 申し込みはWebから!
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSccokczV-wDFnZzKjqXyNpnt_9aPKR3BkJT5fHI0iuWnkyCng/viewform

 『地球のみかた 地球について学ぶカリキュラム』は、人口、気候変動、大気、水、森林、食料、廃棄物、野生生物、エネルギー、貧困、経済、女性など、持続可能な社会を考える環境と人権の二つの柱の主要課題を網羅した授業のためのガイドブックです。

 この生徒用は、『地球のみかた』全13章の「背景となる読み物」の部分(2-3ページ程度)を収録することで教科書としても活用できるのに加えて、主要なアクティビティのワークシートを含んでいます。98ページで、この内容、この価格は、魅力です。

 そもそも、学校で使いたいという要望を受けて教員の方とともに開発したものです。ぜひ、この機会に学級単位、学校単位での活用をご検討ください。

 元の価格が、裏表紙に「定価1200円+60円」と消費税5%で表示されています。一梱包40冊も、中学、高校の学級人数を考慮したものです。

『地球のみかた』の目次とアクティビティリストおよび生徒用の目次のpdfをアップしました。参考にしてください。

http://www.eric-net.org/news/EarthMatters.pdf



◆◇◆目次◆◇◆

◆◇◆1. 「哀しみを抱きしめる」共感に根っこを置く社会を! 2
◆◇◆2.  ESDファシリテーターズ・カレッジ テーマ「人権」 「問う心」で深まりと気づきを促す
◆◇◆3. by ERIC これまでの活動


◆◇◆1. 「哀しみを抱きしめる」共感に根っこを置く社会を! 2◆◇◆

1. 「特別なニーズに応える」ことは環境・人権両方の教育的課題

ERICnews 500号by ERICは、「特別なニーズのある参加者」にどう対応するかということを考えた主催研修の直前に発生した相模原事件の激震のなかで、出されました。ちょっと感覚が麻痺したまま研修していた気がします。

「特別なニーズのある参加者」とは、PLTが個別化教授法の一貫として教育現場がより包摂的、インクルーシブであろうとする努力の延長に生まれています。
http://www.eric-net.org/news/Making%20Outdoor%20Programs%20Accessible.pdf

いま、教育現場においては、特別支援学級や学校などによる配慮があり、小学校段階までは、子どもたちは身体的知的障害がある子どもたちとともに生きることを学んでいると思います。

それは、人権概念の発展に添うものでもあります。「多様性と包摂性」「公正さ」「問題提起を受けとめる」がいまのわたしたちの社会のめざすべき方向です。

環境教育は、基本的に野外教育を含むために、これまで身体的知的チャレンジのある参加者に対して、「ウェルカム」なプログラムではなかったのではないかと思います。だからこそ、Making Outdoor Programs Accessibleという手引書も生まれて来たのだと思います。

とはいえ、このガイドに紹介されている「対応する特別なニーズ」は多様です。
視聴覚障がい
身体機能障がい
認知的遅滞
学習障がい
複合的障がい

 また、先号のERICニュース「PLT事務局ニュース」でつのださんが紹介してくれた山口さんの感想にもあるように、「ニーズ」はそれぞれ障がいの内容や程度によって多様なのです。結果、「ベストをすべての人にというのは難しくても、ベターをめざす姿勢」そのものが環境教育であるというのはとても重要な指摘だと思いました。
http://ericweblog.exblog.jp/23172649/

問題提起を受けとめて改善する姿勢。それは人権でも環境でも同じなんだなと思います。また、ペアを組んでアクティビティに取り組むことは、参加者相互の支援と学びあい、「境界線」の探り合いと確立体験という学びにつながるのではないでしょうか。

2. 共感性の欠如と社会的分断に応える

「特別なニーズに応える」姿勢について、教育現場が後退することはないと思いますが、相模原事件を起こした「加害者」になってしまった人やその行為を賞賛するネットでの書き込みなど、社会的には課題が残っていると思います。

教育は訓練ではないので、同じ考えや行動を刷り込むものではありません。どのような教育をしても、一人ひとりの育ちは多様です。

しかし、ブログで紹介した本の中に、いまの社会の傾向に警告を発しているものがあり、そのような傾向があることについては、教育が応えようとする必要もあるのではないかと感じています。

一つは、500号でも指摘しましたが「共感性」の育ちです。

『失われていく共感性』という本で町沢さんは、人間の古い大脳辺縁系の皮質と前頭前野の新しい皮質との結合が共感性のもとであり、それは8才までの脳で育つのだといいます。
http://ericweblog.exblog.jp/22868481

8才までの脳というのは『環境対話法』の平山さんも指摘していることです。

同時に、『あなたの子どもに自然が足りない』も、子どもの自然環境における育ちの重要性を指摘しています。

小学校中学年までは、からだを通した関係性の育ちが必要な時期なのだと言えます。

もう一つが、いまの社会が共感性を、特に弱者に対する共感を阻む社会であるという指摘です。

http://ericweblog.exblog.jp/23137362

例えば、「生活保護」を受けられる人と受けられない人が線引きされ、受けている人に対する救済が手厚ければ手厚いほど、再分配政策は不人気になる。

また、戦後の高度経済成長社会が「勤労」による「サービスの購買」をどんどんすすめ、住宅や教育などの基本的ニーズすらかなりの高コストで購うシステムに日本はなっています。

しかも、日本の予算システムが「ニーズ」に応えるのではなく、形式的平等主義、総額方式で分配されるために痛税観が高く、負担増に対する合意が形成されにくい。など、指摘にはいちいちうなづいてしまいます。

その結果「平等・自由・愛国心・人権といった価値観を顧みない国になろうとしている。」014という危機的状況にあるのです。

教育の課題は、普遍的な価値に基づく社会を形成する、そのような社会の実現に向けて問題解決をする人材育成であると思います。

危機の時代であるからこそ、わたしたちに与えられた教育という機会をどのように活かしていくかに心をくだきたいですね。

3. 障がいについての理解がすすむ

ここ一ヶ月の「週5プロジェクト」をふりかえるだけでも、障がいについての理解を豊かにしてくれる本がありました。

『リハビリの夜』は衝撃的でした。
http://ericweblog.exblog.jp/23160192
『7本指のピアニスト』は、本人も「残りの三本の指が動かせるように手術できると言われても、治療しないことを選ぶ」と、障がいを受け入れていたり、その障がいがもたらしてくれた人間的な気づきや音楽的成長に感謝していたり。
http://ericweblog.exblog.jp/23161752

また、今年はパラリンピックなど障がいのある人々の活躍を見る機会にも恵まれます。

「24時間テレビ」での障がいのある子どもへの親の暴力、障がいのある人々の「努力」と「達成」にだけ焦点を当てる「感動ポルノ」としての弊害も指摘されます。

*感動ポルノとは、オーストラリアのジャーナリストでコメディアンであるステラ・ヤングさんが作った言葉。
https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much?language=ja

しかし、わたしたちは本当に多様な自己開示、表現に触れることができる時代に生きているのです。そのことをよりよい理解や共感につなげられないとしたら、その教育者はどれほど怠慢のそしりを受けても仕方ないでしょう。


■おすすめリスト
『点滴ポール 生き抜くという旗印』
http://ericweblog.exblog.jp/23184432/
『母よ、殺すな』http://ericweblog.exblog.jp/23105088
『重症児のきょうだい』http://ericweblog.exblog.jp/22360202/
『風の旅人』http://ericweblog.exblog.jp/6795911/
『潜水服は蝶の夢をみる』http://ericweblog.exblog.jp/7030975/『最強の二人』映画
『自閉症の僕が跳びはねる理由 会話のできない中学生がつづる内なる心』http://ericweblog.exblog.jp/21400848/
『しがまっこ溶けた』http://ericweblog.exblog.jp/811967/


4. 共感を育てる教育の課題

戦争体験やハンセン氏病元患者は当事者の高齢化が「継承」の上で課題になっています。障がいについては、当事者による語りがなくなることはないでしょう。

では当事者の体験を読ませれば、あるいは語りを聞かせれば、共感性が育つのでしょうか。

『原爆先生がやってきた!』の特別授業をしている池田さんは、「当事者の話は、「主張」がどうしても入って来てしまうために「反発」も招きやすいと指摘しています。

「左巻きのジジイが政権批判するなんて許せない。無駄な時間を過ごした」というようなとんでもない感想文を、講演者に送りつけるような学校教育の劣化がある一方で、やはり、原爆先生の指摘はあたっているところもあると頑是ざるをえないのです。

http://rdsig.yahoo.co.jp/RV=1/RU=aHR0cDovL2hlYWRsaW5lcy55YWhvby5jby5qcC9obD9hPTIwMTYwODE1LTAwMDEwMDAyLWFzaWFwLXNvY2kudmlldy0wMDE-;_ylt=A7YWNkSnC7VX22cAVK_yluZ7

わたし自身がこれまで当事者のことで教材にして一番よく使って来たのは「しがまっこ溶けた」です。これは恵泉女学園の学生が、ハンセン氏病元患者の方との交流を描いた本から作られたアクティビティです。

元患者である桜井さん本人の手記ではないのです。そして、キーワード「しがまっこ溶けた」、長く差別され続けて冷たくはっていた心の中の氷が、あなたとの交流を通して溶けましたよという言葉。

人権研修では、「しがまっこ解けた」交流とは何かを考えることにつなげています。

それを思うと、池田さんの指摘は、教材開発に活かせると思いました。
◎第三者の視点だからこそ、当事者でなくても語り継げる
◎事実を淡々と。
◎しっかりとしたデータで。

障がい、在日、性被害など、弱者、被害者に対する共感的理解のための教材は、まだまだ工夫の余地がありそうです。

この夏、「ぐるっとパス」という東京・ミュージアム入場券割引券つづりで、あちこちの博物館に出かけています。それを使って、昨日は昭和館に出かけました。

空襲を体験するボックスがありました。「聞く」のではなく、自分が体験することも、有効ですよね。ただ、場所が一カ所だけで、二人ほどしか入れず、学級単位で訪問した場合は、全員が体験することはできないだろうなと思いました。逆に、あの音響効果を学級に持ち込んだ方がいいのではないだろうか。ついでに、「ズーン」という爆弾の着弾音とともに地面が揺れれば、臨場感あふれるものになりそうです。

ことばは、まず音からわたしたちのからだの中に入ってきます。「音ことば」の方が「言うことを聞け」という支配が強いのです。

昭和館で開催されていた「隣組ってなんだったの?」という展示を見ていても、どれほど「音」が活用されていたかがよくわかります。

視覚野だけで文字は読めません。聴覚野とかならず連動して、言葉を読んでいるのです。

学校の「言うことを聞かせる」「命令語」以外の豊かな声の文化を取り戻すことが、共感性を育てるための道でもあるように思います。

ERICの参加型研修は、「音の文化」の体現でもあります。ぜひ、ご参加ください。


◆◇◆2. ESDファシリテーターズ・カレッジ テーマ「人権」 「問うこころ」で深まりと気づきを促す◆◇◆

ERIC主催研修2016年度第3回は、「人権」をテーマにしたものです。

今回の研修では二つの「問い」について、効果的な問い方の違いを検討したいと思います。

一つは「みんなの頭で考えたいテーマ」についての問いです。

そして、もう一つは「価値観を育てる」ための問いです。

前者はプログラムづくりの時に、比較的よく出てくる「問い」方です。

「テーマを搾り、Howを示す」問い方です。

それに対して後者は、「ESDは価値観の教育」と言われているにも関わらず、どのような教育が価値観を育てるのかについては『リビング・バリュー』や『ケーガン教授法』が取り上げているだけです。

http://ericweblog.exblog.jp/950140/
http://ericweblog.exblog.jp/845099/

How の背景には「なぜ」がある。そして、「なぜ」の背後には価値観がある。

四つの活動形態を、しっかりとERICの経験学習の四段階につなげることで、人権尊重の価値観を育てることにつながることを、検証したいと思っています。

ぜひ、ご参加ください。
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by eric-blog | 2016-09-01 17:26 | ERICニュース | Comments(0)
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