多数決を疑う 社会的選択理論とは何か
坂井豊貴、岩波新書、2015
2529冊目
議員や首長を多数決で選ぶのは無謀ではないか? とあとがきに言う。
安倍政権は「国民の信託をいただいて」とよく言うが、彼らの多数議席獲得には、こんな裏がある?
というような時節柄のコメントはまったく出てこない。いまの時期だからこその危機感も、きっと持っているんだろうなあとは思わせるものもあるが、基本的に普遍的な課題として語りたいという意図がよく通っている。
基本は「多数派は割れる」である。少数のマニアックな支持が確実に生きる。
絶対主義と相対主義の議論をした時にも感じた課題だ。
相対主義的で、バランスがとれた主張をする人は、絶対主義者の主張する力に勝てない。勝つ気もないし。相対的だから。
では、どうすれば民意を繁栄させることができるかについての学問的な成果をまとめたのがこの本である。
ボルダとコンドルセという200年も前にこの問題に取り組んだ人々の理論。
民主的と言えるかどうかについて五つの基準が立てられている。
○ペア勝者規準
○ペア勝者弱規準
○ペア敗者規準 ペアごとの多数決では負ける人が全体での多数決で勝つことを防げるか?
○棄権防止性
○中立性
人民主権についてのルソーの考え方も紹介されている。『社会契約論』
一般意志に従う。
熟議的理性
「人々の利害対立が鋭く、意志が一般化できない対象は、そもそも投票の対象にはならない。81
自分の中にもある一般意志につらなるものを確認する作業も大切なのだとルソーは言う。