移動を生きる フィリピン移住女性と複数のモビリティ
小ケ谷千穂、有信堂、2016
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フィリピン女性の日本での、そしてフィリピンでの活動についての研究。
フィリピン女性と言えば、「国際的出稼ぎ」の代名詞のような存在であるが、海外出稼ぎ労働者は労働者の人口の1割。彼らが母国に送金した金額もGDPの1割近くになっている。
大学進学率も30%と高く、出稼ぎする人々も、国内では高度な技術職についていたりすることが多い。出稼ぎ先での職種のギャップは男性より女性が大きいとされ、女性は家事労働者が大きな割合を占めている。66
JFCというのはニッピ国際児のことであるが、問題提起として使われる場合は、日本人の父親から連絡を断たれているケースのことをさす場合が多い。164
JFCにとって課題なのは「日本国籍」の有無。胎児認知でなければ、婚外子の場合は国籍がとれなかった。
2005年4月の東京地裁の判決で、「良心が婚姻関係にないことを理由に日本国籍を付与されないのは違憲」という判断がでた。「合法的な家族=良心の婚姻に基づく家族」の成員のみが政党な「日本国籍保持者」とする「家族=国家」観をJFCが打ち破った。23008年4月、最高裁においても憲法違反の判断が出された。その後、国籍法が改正された。
家族とそれに依拠した国籍のありかたを、根底からゆさぶるもの。165
越境移動者の存在が国民国家の幻想を揺るがし、国際的な人権擁護の考え方を徹底させていくことにつながっていく。