ESD ファシリテーター学び舎 for BQOE 2015年度 ふりかえり
【週5プロジェクト総括】 2015年4月1日から始まった週5プロジェクト15は、214冊を紹介。 (2016年3月31日で2472冊まで。220冊!やったあ!) 戦後70年の節目の年であり、わたし自身も60歳になった節目の年。戦争と平和、社会への提言に関する本をたくさん読んできたように思う。 ■参加型熟議民主主義をすすめよう! いま、議会制民主主義の多数決だけで、国政が動かされていくことに危機感を覚える。衆参両院で自公で過半数を締めるとは言え、投票率は50%程度、その中で25%程度の得票であり、選挙民全体からみれば17%程度の支持しか得ていない政権なのである。 フィシュキンは、平等、参加、熟議、非専制を民主主義の原則とする。いまの状態は専制に他ならない。少数派の意見を聞く姿勢も、市民社会における熟議をすすめる手だても、とられていない。「熟議」民主主義は、2012年の夏を最後になりを潜め続けている。 Informed consent情報を得た上で同意する、インフォームド・コンセントは医学の世界で、患者が自分の治療について情報を得た上で意思決定をすること。 同様に、わたしたちも、わたしたちの「からだ」である地球や社会にかかわる意思決定について、情報を得て、決定したいと願うのではないだろうか? 意思決定のためには学びが必要だ。それは環境であれ、人権であれ変わらない。 人もそうだし、社会もそうだ。 それが2012年夏のエネルギーの未来についての公聴会の開催であったのだと思う。原子力をベース電源にするのか、それともその他の道を選ぶのか。8割が脱原発を支持した。 ヒロシマ・ナガサキという原子力の軍事利用による被害を被った人々が、「平和利用」という名の下に、原子力を諸手をあげて歓迎したかのような時代もあった。しかし、いまや地震列島、地盤の不安定さなどから、日本で原発を持つことの危険性の認識は高まっている。廃棄物のもっていく先が定まらないのだ。 それを不安に思わないのだろうか? 未来の世代に対する責任を思わないだろうか? ■ 積極的平和を構築しよう! 戦争、平和、沖縄についての本も多い。 「積極的平和」という概念については、『いっしょに考えて! 人権』で人間の安全保障という人権概念が出てきた背景として、紹介している。 安全保障と言えば国家安全保障と考えられていたものに対して、緒方貞子さんらは、人間の安全保障が国際社会の安定につながることを提唱した。人間の安全保障とは「恐怖からの自由」「欠乏からの自由」という人権保障そのものである。 積極的平和とは、武力衝突や戦争の不在ではなく、人権がなされていること。 軍事力の強化によるものではないことは、この言葉を最初につかったガルトゥングが、構造的な暴力がないことと定義し、安倍首相の用法にいなやを表明したことからも、明らかだ。 沖縄の非武装中立平和主義は、極東のクロスロードにある日本列島の生きる道でもあると、わたしは思う。 明治時代の追いつけ追い越せの富国強兵政策を、根本から考え直すことが、対米追随からの脱却の道だと思っている。 重武装の道を選ばないためには、民度の深化が不可欠だ。わたしたちの社会の民主化だけではなく、アジアの民主化に対する信頼を築くことが必要だからだ。 少子高齢化に対応するために外国人労働者に門戸を開くとしても、わたしたちが頼る先はアジア諸国なのではないか。アジアの安定が日本の未来でもある。 自ら火種をまく愚は避けたいものだ。 これまで軍隊を持たないと言っていた日本が武装を強化する。 そして、イスラエルと協働して武器開発に乗り出す。 そんなメッセージが世界に安定をもたらすと、 どのような想像力があれば、思えるのだろうか? 戦争にまつわることは、秘密だらけで明らかにすることには時間がかかる。 大量破壊兵器をめぐるイラク戦争も、 ドイツ軍のアフガン派兵についても、 残したものは混乱と痛みであったことが、明らかにされつつある。 国連平和維持軍の役割も再考が求められるだろう。 武装強化は、世界の不安定さを増すだけなのだ。 ■貧困・格差・オルタナティブ 若者の貧困、経済的徴兵、下流老人。女性の低賃金と貧困、シングル・マザーの困窮の問題だけでなく、貧困はいまや各年代層に広がっている。 地域共同体や家族からは問題解決能力が失われている。そのために、当事者たちは国の政策に右往左往させられているのだ。 石井紘基さんがあきらかにしようとしたように、課題は「特別会計」なのだ。政策で決定することのできる予算が、右往左往を増幅する。 どんどん増える財団法人や公益法人。胸先三寸で配分される予算。 補助金、助成金で運営しているNPO,NGOも、同様だ。予算のつくところ、あっという間に団体が増え、そして消えていく。被災地支援も、助成金、補助金がなくなる五年目を迎えて、大きく様変わりしていく。 株価だのみ、大企業頼みの経済政策は、優良な雇用を生み出すには至らない。 いまや経済は金融経済によって左右される存在だ。経済を政策の指標にすること自体があやうい時代であることを、よく理解する必要がある。 国際金融の世界は、一国の予算でなど、どうにかできる規模では、すでにないのだ。ブラック・スワンは、いつどこでどのような規模で生まれるのか、誰にもわからない。たかが一国の政権ができることと言えば、小手先の小銭稼ぎでしかない。そんなことに一国の予算を割くのは、自殺行為である。 そして、いま、日本の年金は焼身自殺で燃え上がり、保険は米国にのっとられ、医療保険もぐらついている。そして、教育はと言えば、迷走中だ。 国民から吸い上げた潤沢な資金が、まだまだ日本にはある。それを国家の足腰強化のために使うのが、すじだろう。 ■教育の迷走? ESDをガイディングスターに。 教育については「アクティブ・ラーニング」が大流行。それがなんであるかは、あまり明確ではない。文科省の定義によれば「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」とする。 「学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。」と、導入の目標が定義されている。 学校教育においてもっとも大切なことは、「学校全体アプローチ」であることは言うまでもない。能動性を育てることが、ある授業の一時間だけでできると思うことが理解しがたいことである。 学校文化そのもに「隠されたメッセージ」が生まれてしまうことを指摘したのはイバン・イリイチである。すでに学校には隠されたメッセージがあり、学習するということは、すでに学ばれていることの脱学習を伴うことを曝露した。 いまの学校文化が子どもに対して伝えているメッセージは何だろうか? そのメッセージは「能動的に生きる」ことを称賛しているだろうか? どうすれば「能動的」であるということかを、具体的に手取り足取り教えているだろうか? 主体的に学ぶということは放っておいてできることではない。ほとんどの子どもにとってはね。 家庭はどうだろう? 地域はどうだろう? 社会はどうだろう? 希望よりは危機感を訴える本が多かった。それでも「なりたい未来」に向けて行動することがAvtive Hopeなのだと、ジョアンナ・メイシーさんの本は言う。 そんなこと、参加型学習の学びの伝統の中に、すでにも何回も何回も共有されている。「なってしまう未来・なりたい未来」。わたし自身、なりたい未来をめざして、なりたいような在り方で生きることを、選び続けている。 教育学を志して、わたしが学んだいちばんのこと。「わたしの人間形成に責任を持つ」ということ。 そのために「多くを知る」ということも実践していることの一つで、週5プロジェクトもそのための努力の現れだ。 教育者たちよ! みんなして、学習者に対して「能動的」であることをメッセージとして、伝えよう。 ■明治時代に創られたもの 衝撃的だった本は『山県有朋』だった。 ここまで民主主義を嫌い、弾圧し、国体から換骨奪胎してしまった人が、いたのだという驚き。 そして、いままた、それと同じことがくり返されようとしているのかという恐怖。 今年も多くの著者、研究者、先達たちに感謝。 よりよいものを創りだしていく力としたいと思います。多謝。
by eric-blog
| 2016-03-31 09:33
| ■週5プロジェクト15
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