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旅する名前

旅する名前
車育子(ちゃ・ゆっちゃ)、太郎次郎社、2007
2466冊目

昨日借りていたのに、枕元に置いておかなかったのは一生の不覚! と思うほど、おもしろかった。おもしろいというのは失礼だけれど、「ひっかかり」や「瑕疵」がある方が、他人から見て人生に味がある。順調に行っても、別にトップになれたりするわけではないのだから、フツーに生きているとすると、「傷」がある方が、語れる。

いろいろな異和感が気づきになるからだが、在日の場合は、アイデンティティのもとになる「言葉」「食べ物」「行事」「国籍」「ルーツ」、そして「差別」など、人生満載。

家で呼んでいる名称、ハンメでおばあさんのことを呼んではならない。
キムチが弁当に入っていたら、あけずに、水を飲んで我慢する。
親戚が集まると必ず踊りだす。
どぶろく(マッコリ)を作って、密造酒の摘発に合う。
帰化してもいいと思って作文し、「朝鮮系日本人として誇りをもって生きたい」と書いたら、行政書士に帰化しない方がいいでしょうと言われる。

あかんわ、これ。日本、滅びる。

いまだに、米国はどんどん流入人口で人口が増えている。
ずっと、米国の人口は2億4千万ぐらいと覚えていたのに、気がついたら3億越えている!

アフリカ系アメリカ人とか、日系とか、共生がうまくいっているか否かは別にして、そういう多様なルーツを明示的に受け入れている。

日本人ってなんだ?
極東のこの島国は、多様な流入人種で成り立っていることが、遺伝子的にも明らかにされている。言語も、安本美典さんによると「流入語」らしいし、文化的には、青木保さんによると重層的らしい。それが日本の活力なのに、だったのに、いつからこんな狭苦しい島国になってしまったのか?

国際人を育てたいと言いながら、自らは国際人になることを否定している。

日本というルーツを持ちつつ、普遍的な価値を認めたり、日本の中の多様性を尊重したりすることはできるはずだ。「日本」を平板にすることは、生きものの原則に反するなあ。

いま、沖縄が非武装中立の交易観光立国をめざしているが、琉球列島だけではない。日本列島も、同じような地理的位置にあるのだ。

目を覚ませ! と、この本を読んで、つくづく思った。
by eric-blog | 2016-03-27 08:44 | ■週5プロジェクト15
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