フェアトレード学 私たちが創る新経済秩序
渡辺龍也、新評論、2010
2464冊目
NHK記者、JANIC、JVCなど、ジャーナリズムと現場の両方を体験してきた著者によるフェアトレードについての実践と議論の総まとめ! すばらしい!
「おわりに」で著者は言う。
フェアトレードは、「人間性」を回復しようとする営みである。
「見えざるコスト」を顕在化させ、社会と環境に十二分に配慮した経済を取り戻そうとする営為である。
社会的公正と商業的成功という相反する2つの目的を同時に達成しようとする試み。
そのためにフェアトレードはさまざまな矛盾。理想と現実。
バランス。
自由か公正かの二者択一ではなく、より高次元で統合する。323
国内フェアトレードによるまちづくりとの協働で、国内問題にも取り組む。途上国の問題も国内の問題も、自由競争と効率優先の新自由主義思考に根をもっている。325
その意気やよし!
しかし、愕然とするのは日本におけるフェアトレードの認知の低さである。
カタカナ語だからというのではない。すべてが流行で流れていくお国柄のせいなのか。
にもかかわらず、「環境に配慮したものであれば、買いたいか」という問いには7割がYesという。
意識と行動が伴っていないということなのかな?
もう一つ、ショックなデータはイギリスのもの。
NGOなどへの寄付をするという人が激減しているのだ。これはどういうことなのだろうか?
本文においても、その傾向は指摘はされているが、背景の解説はない。ショックだ。
この本が出されたのは3.11以前。震災後、わたしたちはもっと「国内フェアトレード」の考え方を浸透させ、「食べて支援」などという人権も環境も無視したような動きに、フェアトレードの原則で対抗することはできなかったのだろうか? と、ふと、疑問に思った。
フェアトレードの四世代。広がり、深まり、新経済秩序となることを期待したい。
フェアな未来へ: 誰もが予想しながら誰も自分に責任があるとは考えない問題に私たちはどう向き合っていくべきか 単行本 – 2013/9/10
ヴォルフガング・ザックス