戦争する国の道徳 安保・沖縄・福島
小林よしのり、宮台真司、東浩紀、幻冬新書、2015 2463冊目 3.11以降、このお二人とは、親近感を覚えるようになってきている。小林よしのりさんと宮台真司さんだ。東さんは、この対談の司会、のような佇まい。 とはいえ、『福島第一原発観光地化計画』http://ericweblog.exblog.jp/19248239/は衝撃的だったし、パネルディスカッションでもお話を聞いたことがある。 小林さんは、最近、対米政策についての発言に親近感を覚えるし、宮台さんは、そのあふれんばかりの才能をサブカルチャー以外に「まじめ」にそそぐようになったことに親近感を覚える。 この三人に共通することは、他の人と議論にならないというところ。パネルディスカッションなんて、なんもおもしろくなかった。議論の土俵が違うというのか、規定的な路線での言葉遣いや枠組みの前提そのものを、たぶん疑っていたり、疑うことによる知的な挑戦や発見を楽しもうとしていたりするのだろう。 でも、この本はすごい。わかりやすいし、地平も広い。 『戦争論』を小林さんが出したのが、もう17年も前。日本の右傾化に拍車をかけた本と評価されているようだが、最近の『新戦争論I』『大東亜論』の受け止めは違っているという。右に寄りすぎた日本を真ん中まで戻す闘いを始める覚悟だという。12 第一部は公開鼎談のまとめ。テロと戦争について。 宮台さんは「主意主義」の右翼と「主知主義」の左翼という「態度」で分ける。 反東京裁判的態度と対米追随が表裏一体となった安倍政権。旧勢力と旧勢力を生かしてくれたアメリカの蜜月。17 人が感動する利他性や貢献性が右翼。一匹狼。 『これが沖縄の生きる道』宮台 沖縄の本気度を示すこと。 『沖縄論』小林 沖縄の二重性。連帯とホンネ。分厚い血縁主義、「もの言えば唇寒し」の恐怖感。24 防衛省の役人たちは、辺野古をゆくゆくは自衛隊基地にしたい。28 冷戦後の1994-96年が転機。97年、新ガイドライン。 宮台さんの考える対米自立路線は「重武装中立化」。武器の開発コスト考えたら、無理だろうけれど。鳩山さんもその路線だっただろうと。アジア信頼回復、憲法改正、重武装化、各種主権回復のパッケージ。33 対米追随のおかげで、沖縄は条件闘争にならざるを得ない。35 ではどうするか。スコットランド独立運動に学ぶ。出自ではなく、イングランドと異なる価値意識の伝統。42 ルーツを言わない、共通価値をうちたてる。「自立価値」。「内地が失ったこういう価値に基づいて、沖縄の社会を運営したい。その価値に共鳴する人なら、日本人だろうが、アメリカ人だろうが、仲間だ。」43 理は大事。しかし、理が通るだけではだめ。・・・通る理なんて、立場によっていくらでもつくれる。省益のような「村」ですら「公への貢献」という理になっている。52 個人より集団の方が動機づけになりやすい。 情念に訴えること。「誇り」を語ること。沖縄戦で犠牲になった沖縄で米軍基地を放置するのは恥だと宣言すること。 劣化した感情の発露。 反知性主義ではなく。感情が劣化しているから知性を尊重できない。55 外資系や多国籍企業を儲からせても、とりくるダウンはない。56 ボトムアップで、地域に分散していくしかない。 どんどん個に分断されていくから、これでは活力そのものが生まれない。 「保守」とは、基本的に人間は賢くない。理性には容量限界がある。だから、社会全体のような複雑なものを、理性でコントロールできると考えるのが不遜だと。抑制的で謙虚な立場が「保守」。58 貧しい理性で社会的な全体をコントロールできると錯覚すると、社会の混乱で共同体が崩壊するので、感情の劣化が生じる。保守という立場には、感情の豊かさを護持するという含意がある。内発性を重視する右翼的なものとつながる。58 個人が分断されて孤立すると、埋め合わせのために強いものに所属したがる。 自分の周囲に承認を供給する共同性がないので、・・・疑似共同性や崇高な精神共同体としての国家という虚妄に自分をゆだね、自分は寂しくないと思おうとする。60 退屈。寂しさ。こんなはずじゃなかった感。社会のなかに自分の本当の居場所がない。61 一人ひとりに承認が与えられ、各人が自分が守るべき人、守るべき郷土をはっきり認識しているような社会が望ましい。62 都市に集められ、流動するアトム化した個人。ポピュリズムや全体主義。 戦後の日本は「会社」が擬制家族。 SNSからの撤退。「見えない化」コミュニティによる絆や共同性。 そこからも排除される「感情の劣化」した存在は、排除によって濃縮される。65 どうすれば、感情を育て、そこに理もついていくことができるか。 権力は強力で、いまの若者は反体制の感覚をもっていない。大衆が劣化した感情で巨大な権力に依拠している。75 福島と沖縄がもたらしている「当事者じゃないやつが何をしゃべっているんだ」という議論。これは分断奨励の議論であって、すべてが他人事だといって放置することにつながる。93 同感能力sympathy 寄り添う感情の力のある人間だけがまともな社会を営める。93 どこか主意主義的右翼のもの。 地域性が空洞化したなかで、どうすれば自立が難しい弱者の地域性を復活できるか。平屋だと地域性がつくりやすいのに、マンションだとつくりにくい。アーキテクチャーに由来する力。99 地域性や家族のつながりは、意欲だけじゃ保てない。 いまある手持ちのリソースだけ用いて、どうすればかつて共同体が持っていたよい機能を再生し、悪い機能を最小化できるかだ。昔にもどるのは無理。100 共同態でも相克態でもない相乗態。(見田宗介) さて、第2部。 いま、新しい産業が経済成長にまったく貢献していない。206 全世界で資本主義は終わっている。それでもアメリカはフロンティアを探し続ける。フロンティアとしてのアジア回帰。 新しい発明は職を奪う。207 アベノミクスの金融緩和は無駄に紙幣をすって、株をもっているやつらのマネーゲームだけに使われた。それで終わり。208 コンクリートから人へというのは正しい。 それに対して、自民党が「高度経済成長の先」があるという、郵貯から簡保まで株に注ぎ込んで、株高の幻想だけで成長していると錯覚させる。禁じ手。209 地方を競争に追い込み、敗北に怯える地方に中央勢力を送り込み、全資源を国家と資本が活用して、 「復興」「創生」を名目にしたファンドを募ったり、補助金つけたり。 地方の足元をみたやりたい放題。213 地方は「地方創生」という言葉にだまされちゃだめだ・ 三点から言える。 1. 市場に参加して競争で生き残れは優越的地位にたてない地域では事態を悪化させる。スーザン・ジョージ「構造的貧困」市場で買いたたかれる。 2. ウォーラーステイン、後進地域は先進地域と同じ道を辿って発展することはできない。先進地域は広範な後進地域を前提に、犠牲にして発展できた。 3. 市場での生き残りが不可能なことを前提として、(1)立ち行かなくなった地方を中央に依存させ、(2)霞ヶ関からPDCAサイクルを共有してすべての達成度を中央が評価(3)問題解決能力がないからと霞ヶ関からの人材派遣を拒否できなくさせる。214 百万円でも回る暮らしと百万円しかない暮らし。214 風の谷をどれだけ増やせるか。 貧しくても楽しい。218 日本人は寄り集まって一緒に暮らしていると、血縁や性愛によるものとは違う絆ができる。製造業のように、いっしょに長い時間なにかをやる。家族のようになる。223 個人の流動性をおさえこんで、ある程度の強制力をもって、複数の人間が住み続ける場所を確保。223 「集まって住むこと」の大切さ。 そうそう、大事なことを忘れていた。戦争の終結のためには「手打ち」が必要。互いの論理と正義を尊重しあいつつ、どこかで手打ちをする。 テロを絶対悪とするところで、戦争は泥沼になる。
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| 2016-03-22 16:42
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