戦争を悼む人びと
シャーウィン裕子、高文研、2016 2460冊目 戦後70年、本当に、第二次世界大戦を記憶する人々がいなくなる。 著者自身も1936年生まれ。なんと80歳である。自身が日本にいた間は、戦争について被害者意識しか持っていなかったという。そして。それは、いまに至るも、日本社会がもっている「戦争」のイメージなのではないかと。2 父方の祖父の生涯をたどって、明治からの近代を切り開いた日本人についての小説を書いた。Eight Million Gods and Damons邦訳『夢のあと』 英国に移り住んだ時、POWのその後を知る。元捕虜の人々に取材し『それでもぼくは生き抜いた』(2009)も書いた。 海外に住んで、外から日本の戦後を見つめてもきた著者による加害者としての日本。 昭和天皇は、彼のために戦って命を落とした人々に対して謝りの言葉を表さなかった。・・・歴代の首相は1990年代になるまで、世界に対して正式の謝罪の声明を述べたことがなかった。6 戦争の真実を隠し続け、日本の近現代史を軽視する歴史教育が行われてきた結果、歴史修正主義者たちが育まれたのは当然とも言えよう。6 魂鎮への道:BC級戦犯が問い続ける戦争、飯田 進 「歴史を見直して、その反省の上に立った民族としての謙虚さ、精神の豊かさ、勇気を取り戻すために、」この本を書いた。と。 第一部は戦犯の人々の声、そして第2部が語り部と戦後世代がひき継いでいる語り部。 「東洋鬼」と呼ばれた中国での残虐行為 金子安次 「回天」特攻隊 岩井忠正 特攻隊 花道柳太郎 BC級戦犯 飯田進 泰緬鉄道建設 熊井敏美 シベリア抑留 猪熊得郎 前々から、中国帰還者連絡会の活動は見聞きしていたが、2000年に解散、その後「中帰連」という雑誌が季刊で出されていることは知らなかった。 POW研究会 WAM の活動も紹介されている。 金子さんのお話。 「もし捕虜になった者が変えると、裏切り者か、スパイとして殺すか、わざと危険な戦場に送って死ぬようにした。なぜ日本が戦争に負けたかわかるだろ。日本軍は自分の兵隊を人間として扱わなかった。」32 中国でていねいな扱いを受けたが、戦犯であるとは意識しなかった。責任は指導部にあると。 日本に帰って、どこにも就職できず、苦労した。それでも結婚して子どもができた。娘の一人が病気になった時、自分が中国で殺した子どもの叫び声が聞こえるようになった。 『金子さんの戦争-中国戦線の現実』(リトルモア、2005) 歴史家のハーバート・ビックス『昭和天皇』(2002)「天皇は、日本人が戦争責任を考えることを意識的に抑圧する絶好の存在となった。というのは戦争における天皇の中心的役割を追求しない限り、国民は自分たち自身の役割を問いたださずに済んだからだと。144 ドイツ人は徹底的に反省し、喪に服した。145 侵略戦争を直視しない。 駒井修さん、泰緬鉄道の捕虜の扱いについて戦犯として処刑されたコマイ・ミツオさんの息子。「戦犯の子」として、就職差別も受けた。著者の橋渡しもあって、その時の捕虜の方とイギリスで再会を果たした。 178 非人間的な訓練が彼らを悪魔にしたのだ。 ■戦後70年、わたしたちの人権感覚は育ったのかな? 日本の加害をなぜ語れないのか。その疑問について「カウラの大脱走-戦後60年、わたしたちの人権感覚は育ったのか」というレッスンバンクを作ってからすでに10年がたった。 http://ericweblog.exblog.jp/22606852/ このアクティビティをするたびに、「ジュネーブ条約」という捕虜の扱いについての国際的な取り決めを知らなければ、自分の権利が守られていることも知らないこと、戦陣訓のほとんどに反論できないことなどを思い知る。 わたしたちの人権感覚を育てること。わたしの、だけでは足りないのだ。 大学が象牙の塔であったのは、実は社会学においてではなかったか。昨今の大学人の社会的課題に対する発信を見ていて、そう思う。彼らは「わたしたち」を育てる意思が薄弱だったのではないか、という意味でだ。
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| 2016-03-16 18:20
| ■週5プロジェクト15
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