ERIC NEWS 480号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年3月13日

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ERIC NEWS 480号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年3月13日
ESDファシリテーターズ・カレッジ! すべての学びを参加型で!
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

3.11から5年が経ちました。

被災された方、避難を余儀なくされた方、そしていまも続く立て直しの途上にあるみなさま、お疲れのことだと思います。

3.11の後、国際会議の場で、ふだんは静かで沈黙の参加者であることが多い日本人参加者の方々が、積極的に震災のことを語る姿に驚いた覚えがあります。

わたしたち、みんな、何かしら突き動かされたのです。見ることによってすら。

突き動かされ方がとても大きくて、人生行路からはずれてしまったように感じている方もおられることでしょう。

でも、確かに、あの震災を経験して、わたしたちはどこかで変わってしまったのです。これまで通りでは続かない。

変わってしまったにもかかわらず、その「考え直し」のチャンスを、日本社会は逃したように見えると、冷泉彰彦さんは言います。

それはどこか離れたところから見ている人の感想だなと思いました。突き動かされるゆらぎの中で「絆」が叫ばれ、人々は何かを取り戻そうとしたのです。

取り戻しやすいものに、飛びついたのです。「考え直し」て、違う道を選ぶ余裕などなかったのだと思います。「考える」ことはできます。しかし、からだは、システムはそう簡単には別の動きをしてくれない。生活習慣病のように、「これまで通り」が忍び込んだのだと思います。

混乱の時には「幼い脳」をのっとりやすいものが蔓延るようにも思いました。

「考え直し」に必要なのは、ていねいなプロセスです。

参加型学習をとりいれていて思うことは、参加にはていねいな一人ひとりの参加のスキルの習熟、使っていることばについての共通理解、参加や民主主義という価値観への信念などの条件があるということです。

そのいずれもが欠けている混乱の場。それがこの五年間だったように思います。

少しは落ち着いて、未来への持続可能なビジョンを創造し、ていねいに、実現のために必要なステップを構想していきましょう。

年月を刻むこと、ふりかえりの時を持つことは、わたしがわたしであるために、大切なことですね。

3.11という時が、あなたがあなたであることを再発見する時になったことだと思います。一人ひとり、引き受けているものは違うけれど、それぞれ一生懸命。

そんなお互いに、寄り添って生きている。独りじゃない。

合掌。


◆◇◆目次◆◇◆
◆◇◆1. 環境教育からESDへ、PLTを森林ESDへ
◆◇◆2. 2016年度、ERIC主催研修 ESDファシリテーターズ・カレッジ
◆◇◆3. by ERIC これまでの活動


◆◇◆1.  環境教育からESDへ、PLTを森林ESDへ ◆◇◆

1. 森林ESD研究会報告書『企業・NPOと学校・地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて』

国土緑化機構は、国民参加の森づくりを永らく推進してきた団体です。緑の少年団は全国で3000もあると言います。その8割が学校少年団です。

森を切り口、世界への窓としたESD、森林ESDを、国土緑化の活動にからめていくことができないだろうか? 

森林保全、林業の促進という目標は、それ自体が「持続可能性」の課題だと言えます。森を通して、わたしたちの社会の持続可能性の課題を探る、問題解決のための行動を起こすアクティブ・ラーニングの場として、テーマとして、森が有効なことは、論を待ちません。

2014年のあいち・なごやESDフォーラムでは、プレゼンテーションと事例発表を共有する場を持ちました。その前日に見学会も行われ、学校における優れた森林ESDの取り組み、企業林での学校受け入れプログラムなどを訪問しました。(資料編2 ESDフォーラム報告 参照)

今回、それらの実践と理論をまとめた報告書が出されました。『企業・NPOと学校・地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて』。入手は国土緑化機構まで。

平成26年度に行われた森林ESD研究会での理論的検討、実践事例、そして、学校教育において森林ESDを実践するチャンスを探るきっかけとすることができる教科書分析等が資料編も充実した報告書です。

特に、教科書分析は、教科書会社ごとに記述が分析されているので、あなたの地域の学校で使われている教科書がわかれば、どの単元でどのような森林に関する学習が行われるかがわかるようになっています。あなたの地域の学校では、どの教科書会社の教科書を採用していますか? 

この詳細な教科書分析では、小学校の生活、理科、社会科の教科書から、森林ESDに関わる記述を抽出し、一覧表にまとめています。

森林にかかわる活動、野外活動体験を提供している方々にとっては、学校のニーズを知るための貴重なとっかかりです。教員は、教科書に書かれていることを、どのように「アクティブ・ラーニング」として展開できるか、頭を悩ませているのですから。

ぜひ、この報告書を手に取って、教科書分析のページを開いて、地域の小学校の新一年生、三年生、五年生、六年生を担当する教員に連絡をとってみてください! 学校のニーズに合わせる。それが森林ESDを責任ある教育活動として展開していくポイントです。

E+SD 教育を知り、持続可能性の課題を知る。森林ESDは、その課題の切り口を森林においているESDのことです。森林で(in)、森林について(about)、森林の持続可能性のために(for)学ぶ。それは正しくPLTが言う「森林を世界の窓口として」森林を通して(through)学ぶということです。

2. PLTファシリテーターズ報告会読書会&意見交換会

報告書の成果を汲み取りつつ、次へのステップに活かすべく、PLTファシリテーターの方、数名に集まっていただき、ワークショップを行いました。
http://ericweblog.exblog.jp/22590947/

ワークショップの記録は、わたしのブログにアップしています。また、詳細の記録、特に写真やPDFが見たい方は、かくたまでご連絡ください。

報告書についての発見は、大きく二つです。

一つはすでにお伝えしました教科書に対応する、です。ぜひ、教科書分析を学校との協働アプローチのためにご活用ください。

もう一つは実践例の特徴です。報告書では以下の四分類で紹介されています。
(ア)出前型
(イ)受け入れ型
(ウ)課題解決型
(エ)個別対応型

学校が中心になった実践だけでなく、企業やNPOなどの「第三者」による森林ESDプログラムの提供というのが大きな柱になっています。だからこそ、その第三者がESDの考え方をしっかり理解し、学校のニーズに応えるだけの「質の高い教育」活動を提示できるひとが大切だということでした。

学校の担い手である教員は異動します。そのために、地域とのつながりや継続した森林保全活動にはかかわりつづけることが難しい。第三者の存在のニーズ、コーディネーターやつなぐ人の存在が求められるのがここだと言えるでしょう。

PLTのプログラムを、自分たちの場で提供している方々にも、今回の報告書でまとめられている視点は役立つのではないでしょうか。

PLTファシリテーターが、PLT=森林ESDの推進を課題に会するのは今回が初めてです。改めて、PLTと森林ESDの同質性を確認する機会となりました。

PLTは、「何を教えるのか」ではなく、「どう考えるか」、Teach not what to think, but how to thinkと、考え方、協働で学びあうことを教授法の中核に据えています。それは正しくESDのアクティブ・ラーニングそのものです。

最終的にはPLTの実践見学会を、社会教育、学校教育で行い、その後にふりかえりミーティング、公開ワークショップを行う一泊二日の「PLTファシリテーター・スキルアップ&森林ESDタイアップ」企画をできないかということになりました。

来年度にPLTを子どもたち対象に行う機会がありましたら、ぜひ、その見学会をご企画ください。その後の勉強会やワークショップの企画運営は、協力してすすめましょう。

ぜひ、ご検討ください。実践例は、さきほどの学年・単元だと、すばらしいですね。

それに先立って、今回のような報告書勉強会を、地域で開催しませんか?
ワークショップのプログラムは今回の流れを参考にしていただければいいですし、また、ご相談いただければ、ファシリテーターとして協力いたしますよ!

3. 学校は「ストック」、プログラムは「フロー」

先週末、3月5日にはJEEF主催の「環境教育フェスタ」にも参加しました。その報告も、ブログにあげています。
http://ericweblog.exblog.jp/22571697/


ESDにおいて、学校とのコラボは欠かせない。これから、学校はアクティブ・ラーニング、そして、持続可能な未来のための教育の場として、どんどん成長していくことでしょう。それが国際的なトレンドなのですから。

報告書には、日本の教育行政や学習指導要領の変遷もまとめられています。その流れをふりかえった時、客観主義の知識中心教育と構成主義の学習者中心教育の主張が、ふりこのように振れていることを感じます。

近代科学技術産業社会は行き詰まっています。巨大科学は破綻しているのに、一方ではナノ技術やロボット技術によって、わたしたちの生活や労働そのものが大きく変わっていく未来。人間は、その時、どう生きていくのでしょうか?

人間が人間らしく生きることができる社会。制度の奴隷でもなく、技術の歯車でもない。

大きな流れは近代の人間化を要請しているのです。

教育は、未知なる時代をどう切り拓いていくかという課題に応えるものでなければならないことは明らかです。

わたしたちはどこへ行きたいのか?
なってしまう未来ではなく、なりたい未来へ。

課題解決型の先、ビジョン形成能力、ビジョン実現能力が、鍵なのではないでしょうか。

ESDは、そのような未来を拓く価値観とコンピテンシーの教育目標をしっかりと見据えています。その実現したい未来、その未来に生きる力をどうつけていけばよいか? 

わたしたちがしなければならないことは、バックキャスティングによって、現状を点検し、習熟の道筋をつけていくことです。学校教育は、子どものそのような発達をサポートする「ストック」づくりの機能を果たさなければなりません。「生きて働く力」というのは子どもがこれからの社会に生きていくための「ストック」の蓄積・形成に他ならないのです。

知識も必要です。道徳や倫理も育てなければなりません。未来の世代への責任も学んでほしいし、何よりも学び続ける姿勢と学び方を身につけてほしい。

学校教育カリキュラムには、そのような配慮がすでに取り込まれているのです。

では、第三者が提供できるものはなんでしょうか? 

それを「フロー」と呼んでおきましょう。質のよいフローとはストック形成を促進するもの。

学校はストックに責任をもつがゆえに、「フロー」への要請もしっかりしている必要があります。

「フロー」を提供する側は、価値観やコンピテンシーへの貢献を明確にしつつ、協働する。

学校とのきめ細やかな打ち合わせをしているえんぱわめんと堺の実践にはいつも感動させられます。学校カリキュラムを見るにとどまらず、一人ひとりの子どもを見ているからです。
http://www.npo-es.org

学校の大人とは異なる大人との関わりというのも、えんぱわめんと堺のプログラムの良さだと、北野さんは言います。先生には言えないことでも言えたり、異なる視点やものさしを持っている人を知ることは、子どもたちの世界を広げます。

そういうことも、「第三者」がかかわることで生まれるメリットですね。そこで出会う大人が、学校の大人よりもESDの精神を先取りしている人、SDの実践を体現しているモデルであれば、学校や子どもにとってもよい影響につながります。

ESDの時代。ESDの精神とアクティブ・ラーニングの方法を先取りした人たちが、よりよい、そしてより大きい影響力を発揮していくことが、学校が変わるための支援になるのです。

楽しみですね。
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by eric-blog | 2016-03-12 17:40 | ERICニュース | Comments(0)
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