戦争に抗する ケアの倫理と平和の構想
岡野八代、岩波書店、2015
2443冊目
つまみぐいで申し訳ない。読み切っていないのだけれど、以下の発想がとてもおもしろかったので、ご紹介。本当は「ケアの倫理」について学びたかったのだけれど。
昨日紹介した「最高裁の判決文」を読んで、そこに現れている価値観を明らかにするアクティビティ。あげたり、下げたり忙しいわけだが、今日のアイデアは、いくつかの記念館を比較することで見えてくるものを考えるというものだ。すばらしい!
第二章 「慰安婦」問題と日本の民主化
ここで著者は、指摘する。
「日本政府に法的責任を求める運動が、韓国と日本の対立をまねいているのではない。被害者たちの尊厳回復の基盤としての法(=正義)の存在について、否定し続ける日本政府と、その日本政府をいつまでも変える力のない-わたしも含めた-日本社会における民主主義の不在こそが、韓国と日本の深い溝をつくりだしているのである。57
日本政府は、総理のお詫びの手紙はあっても、政治家の妄言は放置している。自由権規約委員会が最終所見で、黙認の態度を改めるように勧告している。56
さて、この章で著者が比較しているのはwamと国民基金であり、国民基金のデジタル記念館を具体的にはあげている。
ここではwamの展示の三つの特徴だけ紹介しよう。その上で、デジタル記念館を見てほしい。
1. 個々の犠牲者たちの過去から現在にいたるまでの生そのものを伝えようとしている。
2. 被害女性の要請(個人賠償、歴史教科書、公的な真相解明)に答えていない日本政府との批判的距離。
3. 国際社会の一員として、「慰安婦」にされた人びとの尊厳を回復するためには、日本社会の現状をこそ変革しなければならない。
民主主義とは、「人びとの対話、審議、討議、参加、自由と平等、差異への権利、共通善、多元主義、自己相対化、複数性、少数者や社会的弱者のエンパワメント、アカウンタビリティなど」
千葉真 未完の革命 より