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寺院消滅:失われる「地方」と「宗教」

寺院消滅:失われる「地方」と「宗教」
鵜飼秀徳 、日経BP社;〔東京〕 2015.5
2435冊目

http://www.theguardian.com/world/2015/nov/06/zen-no-more-japan-shuns-its-buddhist-traditions-as-temples-close

241ページのデータ

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図書館予約でやっと来た!

278ページの結構分厚い本だけれど、あっという間に読んでしまった。おもしろかった。おもしろいなんて感想じゃあだめなんだろうけれど。

いま、わたしは、神社vs寺院の戦いが始まっていると感じていて、沖縄におけるノロとユタの関係にも等しいものを感じています。

沖縄で儀式を司るノロは中央政府に列せられ、ユタは祖先崇拝などの神人としての力がありながら、政府からは弾圧されていく。

神社は、繰り返し指摘するように、明治時代に伊勢神宮・靖国を頂点とした国家神道に系列化され、格式のランキングに除せられてしまいます。

同時に廃仏毀釈によって、寺院は痛めつけられていきます。ひどいところでは、半分ほどの寺院が廃寺されたとか。

そして、僧侶の妻帯を認め、世俗化し、住職の世襲化が始まり、「葬式仏教」へと弱体化していく。

神社も系列化され、現人神とその系列に対する信仰だけに削ぎ落とされ、結果敗戦によって、現人神も死ぬ。(梅原猛『神殺しの日本』より、p.185に引用)


しかし、この本によるといまも7万7000ほども寺院があり、その内無住なのは2万カ所。その他、兼務寺院として住職がいくつかを束ねている場合もあるとか。

そして、多くは後継者不足に悩んでいる。

一方で、この本では取り上げていませんが、神社も78,954社あるらしい。

神社と寺院が日本の風景からなくなると、ずいぶん日本は変わるなあ。

神社は祭りで
寺院は葬式と墓守で 経済がまわっているのか。

年間100万円程度は光熱費と宗門への冥加金で消えるという。28

戦争への加担も寺院も神社に劣らない。

「精選のためであれば敵を殺すことを容認する」204
めちゃくちゃ詭弁だ。

軍隊の駐屯に寺を貸したこともあるとか。206

もちろん、反対者はいた。しかし、そのような動きは抹殺された。

その反省も、していないと著者は指摘する。

しかし、寺院も敗戦による痛打を逃れることはできなかった。農地改革である。寺院は実は大地主だったのだ。216

僧侶が独身者であることの意味。命をかけられるかどうかがかかってくる。236

「日本の僧侶ができることは、・・・今の生活を大事にしながら、人びとに徹底的に寄り添い、その願いに応えようと努力することだ」238

そうかあ。日本では、すでに宗教の意味は失われていたんだ。

墓守も、都会に出て行く人が増えているいま、改葬することが増えている。都会の墓地に、先祖伝来の骨すべてを引き上げるのだそうだ。毎年の墓地管理料を支払わない替わりに。

大変だなあ。

読んでいると、権力は肥大することがよくわかる。江戸時代の寺院の権力基盤が寺請制度。

いまの日本では大企業が権力で労働者は小作人になってしまったんだなあ。

浄土真宗だけは妻帯可能というところから始まったというが。家族と世襲。その問題は神社ではどうなんだろう?

面白い本だけれど、疑問がどんどん湧くなあ。日本の宗教って魑魅魍魎。妖怪みたいだ。
by eric-blog | 2016-01-31 10:52 | ■週5プロジェクト15
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