被差別のグルメ
上原善広、新潮社、2015
2429冊目
『被差別の食卓』はロングセラーらしい。図書館には入っていなかったが。
そちらを読んでいないので、どこが視点が違うのか、わからないけれど、前作については、こんな紹介もされている。
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20110702/1309570063
異なる地域出身の者が囲む食卓は文化の交差点であるが、被差別の食材は、時に、離婚にまで発展することがあるという。被差別部落でよく食べられていたアブラカスも、いまや市民権を得て、チェーン店で販売され、コンビニでも販売され始めたという。
http://ee-lunch.jp/2560.html
本は五章で構成されている。
・路地
・アイヌ料理
・北方少数民族 ウィルタとニブフ
・沖縄の島々
・焼き肉
いずれも、一つの食材に注目した物語になっている。
イラブー汁とか、かすうどんとか、いまはメジャーに仲間入りしているものも多い。焼き肉のホルモンなど、言うまでもないほどだ。
その中で、北方少数民族の章だけは、食文化の実践が少ない。シベリア抑留帰りの兵隊だった人にインタビューしているせいか。女性がいないと食文化も廃れやすいということかな。
被差別の輪郭がぼやけていることが、食文化のメジャー化にも現れている。
被差別そのものもどん欲な「エスニック」なものを求める消費文化の中に取り込まれている。その物語も食材も。
いまのヘイトスピーチの根源は、異質さに対する攻撃や排除ではなく、1月23日の市民連合シンポジウムで森達也さんが指摘していた「均質性」に対する願望、そして一体感というベクトルのためであるように思う。
【追加】
被差別の食卓、新潮新書、2005
こっちの方が圧倒的によい。
子どもの頃あぶらかすになじみ、中学生でそれが「むら」の外では食べられていないことを知り、じょじょに誇りを感じるようになり、アフリカンアメリカンの「ソウルフード」に同じ匂いを嗅ぎ、きっと、抵抗的食文化の中に「余り物」を食材にしている文化があると思ったところから、旅が始まる。
いいなあああああ。
アメリカ、ブラジル、ブルガリア、イラク、ネパール
差別の現実が貧困となっている場所に、余り物料理はある。
ネパールでは、被差別民で国会議員になっている人が、牛肉を食べない運動をしている例もある。
いまは食文化として、消費され、返って価格高騰に繋がっていたりする「抵抗的余り物料理」。
このルポ、ホントにおもしろい。
あとがきに、上原さんは、「この取材とともに成長した。そのぶん失敗と挫折を味わった」という。どこか味がある。