99-10(464) 連合軍捕虜虐待と戦後責任
油井大三郎、小菅信子、岩波ブックレット321、1993 ナチスドイツの捕虜の死亡率7%、日本軍の捕虜27% 8 オーストラリア、カナダ、イギリス、ニュージーランド、アメリカ、オランダの連合国の捕虜総数132134名。死亡者35756名。(東京裁判速記録337) 杉本良夫『オーストラリア6000日』で紹介されているオーストラリア人、キャスリーン・マクロン『イギリス人の日本人観』に出てくる彼らは、日本軍捕虜収容所での扱いを許すことができないと言う。そして、彼らの記憶が、一般的な平均的なこれらの国民の日本人観につながっていると。 日露戦争の時のロシア人捕虜の扱いは違っていた。10 また第一次世界大戦時のドイツ人捕虜も、5年という長期間にわたったにもかかわらず、取り扱いは公正だったという。12-13 とはいえ、中国人捕虜に対する扱いはダブルスタンダードだったという。 ではいつからなのか。欧米の捕虜の扱いが変わり、捕虜観が変わったのは。 1931年満州事変 1929年のジュネーブ条約に調印しつつも批准を軍によって阻まれた。いわく、日本軍人は捕虜にならない。いわく作戦のさまたげ。いわく日本人に対する扱いとダブルスタンダードになる。19 1941年、東条英機陸軍大臣による野戦服務基準としての『戦陣訓』 結果、大事件とされるものだけでも、以下のような犠牲者があげられている。 ・バターン死の行進1941年4250名 ・泰緬連接鉄道1942-43年16000名 ・捕虜移送の「地獄船」1942-44年10850名 ・投降者の即時処分および「最後の処断」1944年など戦争末期 ・「おかわいそうに」事件1942年捕虜に対する同情を禁じ、復讐心を向けさせ、取り扱いの悪いのを正当化する心理 ・パラワン島捕虜虐殺事件1944年12月14日140名 ・民間抑留者に対する虐待、性奴隷 「慰安」という言葉の欺瞞の証言1992年 ・カナダ傷痍軍人会による追跡調査1986 4000人に収容所後遺症=ビタミン欠乏症(全員)、神経症、言語障害など、精神病や社会的不適合88% 私たちと「元捕虜」との深い溝。「重大な人権侵害国」という汚名をそそぎ、名誉を回復することができるのか。61 (465) 「戦場にかけ橋」のウソと真実 永瀬隆、岩波ブックレット69、1986 1942年から陸軍通訳として志願し従軍した著者による泰緬鉄道の事実とその後の和解に向けた努力とプロセス。 「日本軍は日露日独戦争のとき、非常に捕虜を好遇した。...日本人は人道的な国民だといううわさが広まり、みんなそう思っていた。連合軍がシンガポールで降伏したとき、捕虜の待遇については心配もなく、むしろ早く降伏する原因の一つにもなった。」と、16 そして戦後、再び通訳の腕を買われ、今度は捕虜の墓地調査に。1945年9月22日から21日間、200余箇所、1万3000遺体。まだ軍装解除も徹底していない日本軍もいる現地での調査。遺体とともに埋められていた告発の文書、労務者の墓地との扱いの格差など、日本軍の姿を連合軍側の視線にも重ね合わせて見つめて行く日々が著者を変えた。 1963年にカンチャブリーナ連合軍戦争墓地参拝 1976年クワイ河 メクロン橋「戦場にかける橋」を連合軍元捕虜とともにわたる。 1980年東南アジアからの25万人の徴発された労務者のその後を探るたび。 1985年クワイ河平和寺建立 ジュネーブ条約によって捕虜の待遇は適切にされねばならぬということを教えれば、兵隊たちが死ぬまで戦うことを馬鹿らしく考えるだろうと、支配者側は恐れたのではないか。61-62 「枕木一本に捕虜一人を殺してでも鉄道とつけろ」と泰緬鉄道にふれて言ったという東条英機が、いま靖国神社に祀られている。62 主権在民の民主主義国家の姿はどこにあるのだと、著者は問う。
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