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世界の果てのこどもたち

世界の果てのこどもたち
中脇 初枝、講談社;東京 2015.6
2414冊目

子どもの視線から、太平洋戦争の時代を描いている。

東京大空襲を経験した山の手育ち。
川崎大空襲も経験した在日二世。
高知県から満州へ移民した家族の子ども

三人の女の子が、戦争前のある一時に満州でともに遊ぶ機会を得た時の記憶。
大洪水の中、廃屋のような寺で一夜を過ごした体験。

満州移民のこどもは、引き上げの混乱の中、母親とはぐれてしまい、人買いに中国人夫婦に売り払われてしまう。金の指輪一つしかなかった夫婦は、女性が妊娠中に日本軍兵士に腹をけられて流産し、子どもがうめないからだになった経験を持つ。それでも買った日本人の子どもを「宝物」と呼んで慈しんで育ててきた。

在日の子どもが経験した戦前戦中戦後も、当然ながら厳しい差別の経験とともにある。

裕福な家族に生まれた女の子も、空襲で家族をなくし、人の冷たさ、自己中心の行動に翻弄されていく。


それでも、愛されて育った思い出が、彼女らの支えであり、行動の指針となって、戦後30年を経て、在留日本人孤児探しによって、再び出会う。

在留孤児はすでに日本語を忘れている。

伝え合うことのできないもどかしさ。日本に暮らす苦労。

さまざまなストーリーに取材した大河ドラマ。彼女たちが生きた世界の果ては、どうようにして生成したのか、そのことに思いをはせることが、読者はできるだろうか?

終わりよければすべて善しとはさせない。戦争は最高の魂の昇華であるとは、わたしは思わない。翻弄される人生ではなく、自由な人生を、わたしは望むから。

これまでの物語とどう違うかと言えば、わかりやすいアイコンの三人がからみあうものにしているところかなあ。
by eric-blog | 2016-01-03 11:22 | ■週5プロジェクト15
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