ERIC NEWS 470号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年1月3日

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ERIC NEWS 470号 ともによりよい質の教育をめざして  2016年1月3日
生きたい未来を生きる価値観とビジョンを学ぶ
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

2016年、明けましておめでとうございます。

みなさま、よいお年をお迎えのことと、お慶びを申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

2015年は、わたし自身60才、還暦を迎え、エポックメイキングな年でした。

ERICの在庫処分の方向性を決め、ERICネットワークの皆様にもご協力を呼びかけました。

個人的には、髪を「ヘア・ドネーション」(毛髪寄付)に提供しました。小児がんの子どもたちのためのカツラに役立たせるそうです。ERICアルムニのOさんは、つい最近25センチ切ったばかりなのにと、悔しそうでした。30センチ以上の長さが必要なのです。わたしの場合は6束ほど、とれました。「記念撮影されませんか?」「いいんですか?」と感動の物語を期待されましたが、何もありません。いたって健康です。

個人的なことではないですね。そもそも伸ばし始めたきっかけが、2012年の選挙なのですから。2006年の第一次安倍政権の教育基本法改定以来、民主教育から国粋主義的教育への転向なのではないかという疑問が頭から離れませんでした。教育で「愛国心」が強調されるのではないかということでした。

わたしは21世紀に必要な教育は、愛国心教育ではなく、地球市民教育であると思います。COP21が示すように、わたしたちには協力して解決しなければならない課題があるのです。より高次のアイデンティティの獲得によってしか、協力はできない。そのアイデンティティが地球市民というアイデンティティなのです。あるいは地球に生きるいのちの仲間と言った方がよいでしょうか。

■近代国民国家のための教育を越える

近代国民国家への改革が明治時代の日本でした。そのための教育装置が学校教育制度でした。そのことは忘れることができません。学校の校舎の形、学校というあり方そのものに「近代国民国家」が色濃く反映されています。

愛国心教育は、郷土への愛などではなく、国家への忠誠です。国家主義は決して地域主義ではありえないのに、地域主義と愛国心がセットでカリキュラムに取り入れられます。伝統の技を体験するとか、地域の歴史を学ぶとかです。

そのすり替えが行われたのが明治時代です。家族を愛し、地域を愛し、国家を愛し、地球を愛するという同心円的アイデンティティの誤謬が、意識的に取り込まれたのが「教育勅語」です。(石田雄さんの『明治政治思想史』参照)

地域の中で、家族は多様です。国家の中で地域は多様です。その多様性に対する意識が、「同心円的」アイデンティティの拡大の中で、「みんなで一緒に」という均質性の中に取り込まれてしまうのです。おかしいと思いませんか?

確かに「地球市民」というアイデンティティも、同心円的な拡大の延長にあるかのように思います。しかし、地球市民教育は文化的社会的経済的政治的多様性についての理解を根本においています。愛国心教育はどうでしょうか?

知らず知らずに受け入れさせられる「均質性」の罠。それが「同心円的アイデンティティ」の拡大の延長としての「国家」なのです。大和言葉の「クニ」すら、国家は収奪してしまったのです。悔しくないですか?

お国言葉で憲法を、という多様性を含んでいるのが「クニ」なのです。決して国益主義ではないのです。

長い前置きでしたが、そんなこんなの危機感から、伸ばし始めた髪でした。某自民党女性議員が野党に転落した時に伸ばし始めた髪を、政権復帰に合わせて切ったというのを聞いてのことでした。彼女は三年伸ばしました。わたしも、三年伸ばしました。

地球市民教育をあきらめない。それは多様性と地球益にねざした価値観とビジョンの教育です。仮想敵に対する戦争を前提に、積極的に平和を構築するために軍事予算と協力を拡大し、自己防衛に終止している愛国心教育の対極にある開かれた教育です。

■教育は息の長い社会運動

2012年以来、選挙活動に参加しつつ、気づいたことは、投票行動は「地縁血縁学縁鞄縁」に基づいているということでした。

選挙巧者だと言われる小沢さん率いる「未来の党」を支援した時、その事務所に選挙ボランティアに来ていたのは東北出身の方でした。

選挙巧者だと言われる山本太郎さんの参謀が率いる選挙を支援した時、地縁血縁学縁鞄縁を越えることはできませんでした。

地球市民とは「環境」とか「人権」というテーマ型コミュニティなのです。価値観を共有し、ビジョンを共有する人々のつながりです。

これまで「テーマ型コミュニティ」が「ローカル型コミュニティ」に勝利するところを、選挙で見たのは山本太郎さんだけです。

その山本太郎さん型選挙は、地方では、成就しませんでした。

地球の持続可能性という共通のテーマが、選挙で地縁血縁学縁鞄縁を越えることができるでしょうか? リアルで、強い「絆」に、ほのかで、弱くて、信じがたい「テーマ型」のつながりは、勝てるのでしょうか?

そんなことを考えながら、髪を切りました。伝わる言葉がない自分を感じながら。強い、しっかりしたものに憧れる自分をいましめながら。教育に信頼と希望を寄せながら。

今年も、参与観察を続けつつ、選挙について、政治について、国際社会について、考え、行動しつづけたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。


◆◇◆目次◆◇◆
◆◇◆1.  What’s New? ERICテキストの人気度は?
◆◇◆2. ファシリテーター養成講座スピンオフ企画のご案内
◆◇◆3.  ERIC主催研修 ESDファシリテーターズ・カレッジの記録
◆◇◆4. by ERIC これまでの活動


◆◇◆1. What’s New? ERICテキストの人気度は?

箱単位で「爆買い」をお願いしてきた「在庫処分ご協力お願い」。お申し出くださった皆様、本当にありがとうございます。

お願いしてきた在庫処分予定の13種のテキスト。

ワールドスタディーズ、PLT木と学ぼう、フードファースト、テーマワーク、わたし、あなた、そして、みんな、地球のみかた、対立から学ぼう、未来を学ぼう、環境教育指導者マニュアル、人権教育ファシリテーター基本編、発展編、実践編、
レッツ・コミュニケート

爆買い人気の高いのはなんと『環境教育指導者育成マニュアル』! でした!

うれぴーーーー!

熊本で倉庫を提供しつづけてくださっている加藤千尋さんと、二人三脚でまとめた力作。分厚いうえに値段も高いので、なかなか売れませんでした。

その反省から人権テキストは三部作と、分割することにしたのですが、『環境教育指導者育成マニュアル』は、本当に優れたカリキュラムだと、我ながら思っているので、この人気はとても嬉しいです。

環境と人権、持続可能性の二本の柱だと思っています。

環境系の人は人権教育の講座には参加せず、人権系の人は環境教育の講座には参加しません。『環境教育指導者育成マニュアル』は、環境教育のテキストでありながら、南北経済格差の問題も扱っているものです。毎年の主催研修では、人権と環境の関わりが、どちらから切り込んでいくものであっても、鹿田ぃとしています。

お申し込みいただいた方は、「研修に使いたい」とおっしゃってくださっています。まだ、お申し込みになっていないファシリテーターの皆様、ぜひ、ご検討ください。

その他、申し込みが多かったもの、つまり、なんらかの活用が見込まれてのお引き取り希望があったということですが、は、以下の四種でした。

ワールドスタディーズ、
わたし、あなた、そして、みんな、
対立から学ぼう
人権教育ファシリテーター基本編

『未来を学ぼう』も、お高い系なので、この機会にもっと希望者が出て来ると嬉しい限りです。このテキストを活用した研修の記録はこちらから。

http://ericweblog.exblog.jp/21882789/

http://eric-net.org/news/atERICesdfc1402223kiroku.pdf

原著であるイギリスの開発教育グルーブが作成したテキストのタイトルは「価値観とビジョン」Values and Visionsです。

これからの未来を生きるためには、価値観とビジョンを育てることが大切であり、一人ひとりの価値観とビジョンが集合的に、わたしたちの社会の全体を導いていくのです。一人ひとりを育てることが社会を育て、社会を育てることが、一人ひとりを育てます。どちらかだけでは、教育は成り立ちません。

今回の11月の研修は、ちょうどパリの自爆攻撃事件の後で、特に、第2部ふりかえりの鍵「祝いと嘆きを共有する」が心に沁みしました。大きな衝撃があった時に、そのことを語ることができる場があることは、とても大切なことです。

阪神淡路大震災の直後の研修でも、3.11直後の研修でも、参加型の良さはタイムリーであることにもあると実感しました。

今回は、ERICの研修以外の場でも、「折り鶴」を通して、「祈り」の心を共有できたことも、良かったことでした。

1月1日午前4時は、奇しくもパリ事件から49日にあたりました。

9.11、3.11、忘れることのできないメモリアルデーです。

そして、1.17には阪神淡路大震災から21年を迎えます。「祈り」を日常化させた「教会」に毎週通うこと、「一日に五回お祈りすること」などの宗教的行為の意味深さを、改めて認識させられました。

イスラム映画祭で観た『法の書』は、生まれたときからイスラム教徒、まわりみんながイスラム教徒という人々が「コーラン読みのコーラン知らず」になっていないかということを皮肉っていて、面白かったです。

日本の民主主義も形式民主主義、「学級会」民主主義などと、形骸化していることが指摘もされ、批判もされていますが、改めて、考える必要がありますね。


◆◇◆2.ファシリテーター養成講座スピンオフ企画◆◇◆

ここ2-3年、主催研修参加者に化学物質過敏症の方がいらっしゃいます。研修の場に「化学物質」を持ち込まないために、参加申し込みの方には「研修参加にあたってのお願い」などの文書を事前に送って、参加にあたっての配慮をお願いしています。

香料の強いシャンプー、洗剤などの使用を控えていただくというのがお願いの中心ですが、意外なことに柔軟剤などが、何度洗濯しても落ちないなどの課題も見えてきています。

わたし自身は電解水洗濯機を使っているので、もう十数年? 洗剤を使わない生活をしてきています。そのために世間でどれほど柔軟剤や香料のきつい洗剤が使われているか意識していなかったのですが、わたしの子どもの頃の3倍以上の生産量になっていることを、改めて知って驚きました。人口は3倍にはなっていないわけですから、一人あたりの消費が激増しているのですね。

http://www.live-science.com/bekkan/data/senzai1.html

一人当たり一日6Lの石油を使っていて、このうちの5分の1が原料などとして使われています。
https://oil-info.ieej.or.jp/whats_sekiyu/2-3.html

そして、なんとエネルギー消費はわたしの子どもの頃の4倍にもなっているのです。
http://www.hkd.meti.go.jp/hokno/graph_oil2013/graph2013.pdf

グラフを見てわかるように、「再生可能エネルギー」なんて、まだまだ微々たるものでしかありません。

わたしたちの社会は「化石燃料依存症」なのです。

パリで開かれていたCOP21は、二酸化炭素排出量の削減にすべての国が取り組むことに合意しました。議論されたのは燃料としての石油・石炭ですが、その他、原料としての石油の有用さを鑑みる時、わたしたちは、石油依存から抜けることができるのでしょうか?

地球温暖化というのも「化石燃料依存」の病理ですが、石油文明はそれ以外にも「化学物質過敏症」のような病理も生み出しています。そもそも化学物質がなければ、過敏症にもならないのですから。

障害のある人々が社会に出て行きにくいのは、社会に障害があるからだというのが、「社会的障害」という概念で、障害の責任は社会の側にあると主張しています。

そして、障害者差別解消法は「合理的配慮」を求めています。

同様に、わたしたちがその有利性を享受している石油文明の結果、生み出されている病理については、個人がその負担を負うのではなく、社会がもっと「社会的障害」を削減するように努力する必要があるでしょう。化学物質過敏症の人たちが、もっと社会に出て行きやすくするために。

「文明病の痛みと負担は誰が?」
http://ericweblog.exblog.jp/19526903/
http://ericweblog.exblog.jp/19501478/

スピンオフ企画第一回は、COP21に合わせてナオミ・クラインの「これがすべてを変える」上映会を開催いたしました。

上映会の報告については以下より

http://ericweblog.exblog.jp/22028764/

第二回のご案内はこちらから。
2016年1月28日 「文明病の体質改善を考える」勉強会
http://kokucheese.com/event/index/361237/
ぜひ、お申し込みください。
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by eric-blog | 2016-01-02 20:13 | ERICニュース | Comments(0)
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