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生き残ること

生き残ること
ブルーノ・ベテルハイム、法政大学出版局、1992
原著: Surviving, 1979
2413冊目

1903年生まれのユダヤ人。1939年、強制収容所から生き延び、アメリカに亡命する。精神分析学、心理学者。

自身も強制収容所を生き延びた経験から書かれた、極限、外傷と再統合、極限状況に対する反応としての分裂病などのエッセイが収録されている。

この本に行きついたのは、「できないふりをする子ども」についての言及があったから。「失敗しようとする決意」について、そのことが述べられている。学習障害の一つして、覚えようとしないことが原因である場合がある、と。親より偉そうに見えないようにするとか。ユニークであろうとするとか。203

彼らは「良い成績」はとれないと信じ込んでいる。そして、自尊心を維持するために学習しないと決心する。

しかし、この本でいちばん目をひいたのが「アンネ・フランクの無視された教訓」である。340

まさしく、わたしが思っていたことが書かれているのだ。

こうだ。

強制収容所の、あのパーソナリティを破壊する殺人的性格の認識に対抗したいという願望。その願望とは、最も恐ろしい全体主義組織による直接的迫害の下でさえ、私的で親密な生活が営まれ続けうるという例証としての経験にすべての注意を集中することによって、あの認識に対抗したいという願望である。自分のまわりの社会で起こっていることを、私的な生活において無視しようというドリョクが、いかに自分自身の破滅を早めうるかということを、アンネ。フランクの運命が例証しているにもかかわらず。341

ガス室を忘れようとするわれわれの努力を認めないかぎり、彼女の物語に対する世界的賛辞は説明できない。342

人生を以前と同じように続けていくことができるというフランク家の態度が、まさに彼らを破滅に導いていった。

彼らはもっと効果的な生き延びるための計画を立てられたはずなのだ。

惰性への屈服。
知ることは耐え難い不安を生み出すので知りたくないという願望。
焼却炉やガス室からわずか数百ヤードしか離れていないところに住んでいて、それらについて知ることを拒否していた。353
共通の運命から逃れようとする人がいれば、その人に反発した。
生きる意思の放棄。
まだ生きようとしていた囚人たちは、彼らの処刑者たちに奉仕することさえ始めた。
「普段の仕事」、生活を続けることがマスクになった。

人は新しい現実にしっかりと立たなければならないのである。--さらに私的な世界に逃避するのではなく、本当にしっかりと立たなければならないのである。
by eric-blog | 2015-12-31 09:05 | ■週5プロジェクト15
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