東北ショック・ドクトリン
古川美穂、岩波書店、2015
2412冊目
タイトルは明らかにナオミ・クラインの惨事便乗型資本主義から来ている。
*ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く
ナオミ・クライン、岩波書店、2011
The Shock Doctrine The Rise of Disaster Capitalism
http://ericweblog.exblog.jp/18813065/
つまり、ハゲタカファンドのような投資家たちが「創造的復興」に便乗して、投資という名の金儲けに励んでいるのがいまの東北の復興の姿だというのだ。さもありなん。いまの金融資本主義経済においては、投資は行き先を求めて、それこそハゲタカのように鵜の目鷹の目で犠牲者を探し続けているのだから。そして、その結果起こることが「ブラック・スワン」であることも、すでに指摘されている。
*ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ、ダイヤモンド社、2009
http://ericweblog.exblog.jp/12778186/
ブラック・スワンとは
第一に異常であること、普通に考えられる範囲の外側にあること。
第二に、とても大きな衝撃があること。
第三に、それが起こってから適当な説明をでっちあげて筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。
大事なことは、いま金融資本主義の世界は「果てのない国」に住んでいるということ。タレブは医師と教員が「月並みの国」すなわち重力に縛られた法則の世界の住民だと指摘する。それ以外にもあるとおもうけど。
古川さんの記事は復興への投資を、経済発展につなげようとする動きに、このような惨事便乗型資本主義を観る。
その一つが東北メディカル・メガバンク構想だ。無料で検診を受けられる医療体制のようでいて、実際には被災地の遺伝子情報を収集するのが目的だ。
それを「世界中から支援をもらった。その恩返し」と受け入れる。
ヘルシンキ宣言では、「不利な条件にある人」を実験の対象とすることに対する慎重さを求める条項がある。9
弱者とは、研究に参加するかしないかの自由意思が尊重されない人38
当時の内閣官房医療イノベーション推進室長だった中村祐輔さんは、構想が様変わりしてしまったという。「膨大な復興予算を長期的なビジョンもなく単年度会計で処理すれば、残念ですが箱ものや機器類の購入に無駄な予算が使われるのは仕方がないのです。まさに国家戦略の欠如です。」47
壮大な社会実験はこれだけではない。
特区やカジノ、イオンモールもしかり。
地元の人は「大型店はいいときに来て、都合悪くなると撤退」と見ている。166
そして、その間に地域の商店街は足腰が弱まる。
何が真の復興か。東北でいま起こっていることがなげかける課題は、東北だけの問題ではない。
日本の正義は超長期的多角決済だ。恩や義理という感覚が強い。
*西欧の正義 日本の正義
日本文化会議編
三修社, 1980
http://ericweblog.exblog.jp/803926/
やってもらったのだから、いやなことでも、受け入れてしまう。