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義務教育という病い イギリスからの警告 学校を学校らしくしないようにするために

義務教育という病い イギリスからの警告 学校を学校らしくしないようにするために
クリス・シュート、松籟社、2003
2410冊目

原著: Chris Shute, Compulsory Schooling Disease: How children absorb fascist values, 1993

『いっしに考えて! 人権』「人間の尊厳を求めて 恐怖からの自由」プログラムで、「強制収容所と学校はどう違う?」(p,36)というアクティビティを取り入れています。移動の制約、時間の制約、行動の制約など、学校にはたくさん受け入れなければならない制約や条件があって、それは刑務所や強制収容所にとても似ているからです。では、学校は、何が違えば、強制収容所と違うと言えるのでしょうか。

そんなことを考えているわたしにとって、この本は、我が意を得たりというところ。学校が一人ひとりの生徒のことよりも、秩序や決まりを大切にしていること、そのために教員が管理的、抑圧的になってしまうことを、25年の教員体験から、具体的に書いています。

わたしが、教員対象の研修でさきほどのワークをした時にも、「いっしょだ」と発言する参加者もありました。驚きました。「学校は、中学生という反抗期にあって扱いにくい若者たちの隔離施設だ」とも。

問題は、そのような考え方の人も教育現場にはいるということです。

同時に、著者は良心的な教員であっても、学校という装置が果たしている役割に警鐘をならしています。

「学校教育こそが、ヒトラーやムッソリーニのような道化者が闊歩する社会を、あたりまえに受け入れていった精神的基盤を、つくりだしている」048

「ファシズムは、その初期の段階では、適切な少しばかりの強制と厳しさをもってすれば、世界は良い方向に変革すると信じたような、まさしく良心的で、意識の高い人々を、味方にひきつけた。」

ファシズム的な思考=束悍、結束主義、全体主義

確固たる信念をもった指導者の掌に、権力がゆだねられてこそ、はじめて政府は機能する
大きな決断が残酷で野蛮であっても、それが国家に栄光をもたらすのであれば、人々は納得する

著者によるファシズムの思想体系のまとめ052
1.社会は完全に階層化されるべき
2.大衆は、本質的に無知、微弱で、全体としても無力であるがゆえに、啓発された少数精鋭の指導者によって支配されなければならない
3.指導者は、まさに大衆を従属させるべきで、絶対に服従させなければならない。この方法によってのみ、指導者が描く目標にむかって社会が建設されるのである。
4.もしも被支配者が体制に不満をもち、反抗的態度をあらわすことがあれば、ただちに弾圧すべきである。
5.指導者の目標が達成されるために、社会はそのあらゆる側面において、管理されなければならない。管理をすみずみまで行き届かせ強制しなければならない。
6.優秀な指導者こそ、より強力な権力を保持すべきである。良き指導者とは、もし自分たちが立てた目標に反する人間がいるとすれば、その人間の尊厳や価値を容赦なく否定して、目標を実現するもののことである。

と書いて来ると、大衆を生徒に、指導者を教師に入れ替えてみると学校における専制が明らかになる。そういう構造なのだ。

幼いうちから自分が自分であるとという喜びを強め、そして異なる他者を尊敬するようになるような教育こそが課せられた責任。058

第三章 ファシズムを助長する学校環境

強制収容所の経験から「ばかのようにふるまう」ことで暴力を免れようとする態度をベテルハイムが報告している。

うつろな笑い、わざとらしい要領の悪さ、儀礼的な媚び諂い。062
学校建築063
大集会の魔力065

教室を力で制する教師

アリス・ミラー『魂の殺人』毒された教育学 134

特に中等段階について、民主主義を教える装置としての学校のあり方を憂えている。日本でも同じだなあ。

第二部はホームエデュケーションについて。

「遊び」を通じて得たものが学習する上での強力な資源となる 166

子どもの行為の原則が最後にまとめられている。212

1.子どもたちの行為には・・・それなの理由がある。
2.良い教育とは子どもたちが自発的に質問しだしたときに始まる。
3.子どもたちは・・・活発な行為が必要。
4.子どもたちがその知識を必要とするまで待つ。
5.好奇心旺盛な方がよい。
6.恐怖をともなって得た知識は奴隷がつながれている鎖のようなもの。鎖は鎖。
7.「だめ」というのはやさしいが、それは良い教育とは言えない。よい教育は、大人にとっては不確かで不都合なものかもしれない。
8.活発な心は挑戦しも鈍感な心は従う。
9.好奇心を満たす。
10.失敗してもやり直せる。
11.年齢は年代順でしかない。早くやり始めればよいというものでもない。
12.子どもたちを決めつければ、そうなる。
13.遊びは子どもの仕事である。そして、遊びは時間がかかる。
14.子どもが大人に同調するのはそれが楽だから。
15.子どもを批判したり、自信を失わせるようなことは絶対にしない。罰を加えることもしてはいけない。

遊びを阻害するものにも共通しているね。
by eric-blog | 2015-12-22 14:27 | ■週5プロジェクト15
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