安倍「教育改革」はなぜ問題か
藤田英典、岩波書店、2014
2398冊目
植草一秀さんは、昨日の「岩上安身クロストークカフェ」で、現在の財政改革について「制度の予算を減らし、裁量の予算を増やす。」改革である。つまりは権力者に都合のよい、予算をもらおうと人がすり寄ってこざるを得ない構図の予算を増やしている。
著者は、あとがきに言う。「司馬遼太郎が昭和20年にいたる10年を「異胎の時代」と呼んだが、2010年代が二度目とならないことを願う」という。183
どのような狂気がいまの教育改革を牛耳っているのか。
それを教育政策「五本の矢」とまとめている。19
1. 教科書改革実行などの教科書政策に見られる国家主義的な「思想統制」
2. 「心のノート」改訂版や道徳の教科化に見られる新保守主義的な「人格統制」
3. 「小中一貫教育の制度化」にどの学校教育システムに見られる新自由主義的な「教育機会の制度的格差化」(制度的・市場的統制)
4. 全国学力テストの結果公表や大学入試改革に見られる成果主義的な「教育統制」
5. 教育委員会制度改革により促進されかねない学校現場・教職員の管理主義的な「行政的統制」
局所合理主義の氾濫
その上で学校教育のあり方について五つの提言をしている。169
1. 新しい学力と古典的学力の基本的コアに違いはない。
2. 学力・学習・教育の基本は変わらない。4Rs、3RにResponsibility
3. 時間もかけず努力もせずに、力がつくことはない
4. ボトム・クォーターもハッピーな学校。すべての子どもがハッピーで、夢と誇りを育むことのできる学校と教育
5. 名誉の等価性(parity of esteem) 努力と称賛のカルチャー、多様な物差し・価値尺度
6. 地域に根ざし地域によって支えられる学校づくり
三つの準則 175
1. お金も人手も時間もかけずに教育が良くなることはない。
2. 子どもの夢と誇りを大切にしいな教育は失敗する。
3. 支え続けるのは教職員と地域の信頼・支援・協力である。
つまり、教職員の夢と誇りを大切にしない政策は失敗する。
OECD教育使節団が1971 年に公表した『日本の教育政策』では、15歳まで、差別的な教育はしない姿を称賛している。