ERIC NEWS 463号 ともによりよい質の教育をめざして  2015年11月15日

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ERIC NEWS 463号 ともによりよい質の教育をめざして  2015年11月15日
アクティブ・ラーニング、チーム学校、学び続ける社会を生きる
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(文責: かくた なおこ 角田尚子
http://ericweblog.exblog.jp/
twitter : kakuta09  FBもやってます。)

ボクササイズにはまっています。これまで気功、太極拳、ヨーガなど、からだのメインテナンスにつながるものは定期的にやってきていましたが、大汗かくような「運動」はやったことがありませんでした。いつも自転車なので、それが有酸素運動につながっているだろうと安心していたせいもあります。

それがトルコで「口笛が吹けない!」という事態に直面し、顔面筋も使わなければ衰えるという事実を発見。もっと動かさなければと、思い知りました。結局、帰国後、口笛は回復しており、気候が乾燥していたせいもあるかということにはなったのですが、ショックをきっかけに体質改善。

ボイストレーニングの講座が区立体育館であったはずと、チェックをしたら、人気の講座で満員。いつでも空いているボクササイズで通っておけば、タイミング良く申し込むことができるのではないかと、定期的に通うことにしたのです。ちなみにボクササイズは受講者7名ほど。

三つ、気づいたことがあります。
1. 肩甲骨を寄せるって難しい。
2. 顔と左ひざを前に向けたまま、腰と肩を回転させることがわからない
3. いつも動かさない筋肉がたくさんある

肩甲骨と骨盤は、頭蓋骨と並んでからだの中の大きな骨。それをぐらつかずに回転させる? わかりません。つい去年、背中にまわした手のひらを合掌することができるようになったばかり。その肩甲骨をさらに動かす!

毎週、腰肩まわりは筋肉痛。とはいえ、動かし方がおもしろいので、続けます。その内に「極意」に至れるかもしれません。人体模型も購入して、目下インナーマッスルと骨格の動かし方をイメージトレーニング中。

新しいことに出会うのは愉しい! 自分に合っているものに出会えると、愉しさ倍増ですね。

さて、今週のERICニュースatERICfromERICは、主催研修につながる最近のニュースから。

◆◇◆目次◆◇◆
◆◇◆1.  What’s New? いじめ対策と教員の資質向上
◆◇◆2.  2015年度、ERIC主催研修 ESDファシリテーターズ・カレッジの予定
◆◇◆3.  ERICのテキスト在庫処分中! ぜひご協力ださい。
◆◇◆4. by ERIC これまでの活動


◆◇◆1. What’s New?  いじめ対策と教員の資質向上◆◇◆

今回の「What’s New?」では、いじめ問題と教員資質の向上の二つを取り上げたいと思います。

■「いじめ対策」という対症療法ではなく、関係性と社会性のスキルを育てる

教育という場において、いじめ対策とか、予防教育って言い方は変だと思うということは、すでに書いて来たことです。教育はすべて「予防」ですから。

特に学齢期の教育は、人生の試行的実験段階だとも言えるでしょう。もちろん、生きるということの質が低いとか言っているわけではありません。わたしたちはみな、一度きりの人生、いつだった試行錯誤、いつだって学び、です。

それに、いじめは人間関係不全症候群の一つで、その対症療法だけをとることは集団の健全な関係性づくりの基礎にはなりません。悪くすると「これをしちゃいけない」というような萎縮した感覚や触らぬ神にたたりなしの態度を増長してしまうかもしれません。

民主的な社会の基盤を作るための教育は、民主的な人間関係とコミュニケーションのスキルを教えるものでなければなりません。その基本は、「わたし、あなた、みんな」の三つの参加のスキルだとERICではまとめています。

わたし  自己理解、自尊感情、自己主張
あなた  関係性、相互尊重、建設的なコミュニケーション
みんな 社会性、市民性、協力、

ERIC主催研修ESDファシリテーターズ・カレッジも後半に入り、スキル編が始まっています。10月は関係性のスキル「対立を力に」をテーマに行いました。11月は社会性のスキル「協働参画の未来を拓く」を開催します。

「対立を力に」の研修記録は以下のブログで見ることができます。
http://ericweblog.exblog.jp/21780337/

その中で、参加者とともに確認したことは、対立は人生で避けられないことだから、「対立の扱い方」を教えた方がよいし、対立はないよりあった方がよいということでした。ついつい避けたくなる対立ですが、人生のスパイスでもあり、失敗もまた、学びの素なのです。

TEDで「思うはまねく」というプレゼンを行った植松 努さんは、「いじめる人はいる。傍観者にならないこと」と言っています。
https://www.youtube.com/watch?v=gBumdOWWMhY
http://tsutomu-uematsu.hatenablog.com/entry/2014/10/10/115552

いじめは大人の社会の方がすごいのだと、植松さんは言います。そして、明らかに力関係がそこには働いています。学校のように教員が止めてくれるとか、介入するなんてことは期待できません。だからこそ、仲間の力が大事だと言います。

いじめられている人がいたら、ちょっとその人に寄り添う。見方だよというシグナルを送る。理不尽な力の使い方は許さないことを態度で示す。それも一つの勇気であり、スキルです。

とても現実的な対処法を、植松さんは教えてくれます。学校時代というのは、そんな勇気やスキルも含めて、もっといろいろと関係性について学びがある方がよいのではないでしょうか。

例えば、「日本社会」についての学びです。高校の政経や倫社で「日本人論」などをやるかもしれません。しかし、日本社会における関係性について、明示的に学んだことは、少なくとも中学校まではないのではないでしょうか? 

『対立から学ぼう』のカリキュラムを翻訳した後、日本社会の対立のあり方について、研究会を開催しました。その時発見したのが「日本社会の○△□」でした。

○は「均質さを好む」傾向であり、悪く言うと「排他的」です。
△は「力の格差の感覚が大」、つまり、上下関係が強く、力による支配にまかれる。
□は「変化を好まない」、問題解決的でないということです。

このような傾向は、あきらかに国際的な人権尊重社会がめざす方向性とは異なります。国際的な人権についての動向をまとめると次の三つです。

○inclusive 包摂的、多様性を受け入れる
= equity 対等さ、平等に扱う
? プロセス思考、いまの社会に問題がないとは言わないが、問題提起を受けとめて課題解決のために協力することが大事だと考える。変化することを前提としている。

わたしたちは、このような「日本社会の○△□」の関係性やコミュニケーションについて、「学んだこと」はないのです。「まねたこと」がほとんどではないでしょうか。植松さんも、自分自身の体験から、学んで来たのです。

民主的な社会を作る力が「学級会」や「委員会活動」といった組織運営の形だけでなく、しっかりとしたコミュニケーション論に根ざしていること。そのような学びの中で、問題が起これば、またそこから学び、改善するような問題解決行動をとること。

ビジョンなき対症療法は、問題解決学習につながりません。

では、どのようなビジョンや価値観を体現したスキル学習が求められるのでしょうか。

ESDは「人間の尊厳」「社会的責任」「自然の一部としての人間」「文化的多様性」というような価値をベースにしています。

「いじめ」が人間関係不全症のあらわれだとして、いじめの起こらない人間関係というのを考えてみましょう。そのような関係性に向けて努力すること、問題を克服しつつ、「いいパターン」の習熟を続けることが、学び続けることになる。

あなたがつくっている関係性が実現している価値観をESDの価値観でチェックしてみましょう。


■「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」(答申案)に対するパブリックコメントの公募がありました。

文科省のホームページに掲載されています。ぜひ、お読みください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/002/houkoku/1360150.htm

アクティブ・ラーニングという言葉が、毎ページと言えるほど出てきます。参加型学習は、アクティブ・ラーニングの走りと言えると思いますが、「古い革袋に新しい名前」だけでは改革にはつながらないことはあきらかです。

具体的にはアクティブ・ラーニングとは以下のような学習方法があげられます。
小集団での話し合い
オープンエンドな協同での調べ学習
ロールプレイ、シミュレーション、ディベート
情報源についての検討
コミュニティの人々との交流、協働
海外、コミュニティ外とのライブな交流
インタビュー、物語、伝記などを通して、人の生活、人生に触れる。
変革の民主的なプロセスに参加する。

など、まさしく「アンガージュマン」なんて懐かしい言葉ですが、関わっていく態度を養うことがアクティブ・ラーニングであるわけです。

答申は、教員養成、現職教育およびミドル・リーダーの育成、更新研修などの資質向上の機会をとりあげていますが、同時に教員自身の「学び続ける」姿勢の大切さも強調しています。

子どもとともに生き生きと学ぶ。その姿は、教員を志す者であれば、誰しも心奪われる光景ではないでしょうか?

わたしも、カンボジアでボランティア教員をした時に、教室いっぱいのきらきらした眼に触れた時、「わあああ、癒される!」と思ったものです。ひょっとすると、日本の学校で疲れた教員のリハビリにもなるのではないかすら考えました。

さて、わたしが提出したパブリックコメントです。論点を四つにまとめました

論点1 アクティブ・ラーニングの実践について
論点2 ESD としての方向性について
論点3 チーム学校で取り組むために
論点4 教員の多忙化に対する対策
◇論点1 アクティブ・ラーニングについて、指導法として習熟すべきことが
多様な教科において求められています。
わたしが勤務するNPO法人国際理解教育センターでは、「参加型学習」の方法を使って「国際理解教育」「環境教育」「人権教育」などの内容教科を参加型で教える学ぶ方法を、指導者育成研修において実践しています。
教員養成の免許において、「教科に関する科目」ではアクティブ・ラーニングの視点が取り入れられていますが、教育の基礎理解に関する科目においてはその言及がありません。教育目標、教育内容、教育方法などについての参加型でも学びの体験が「チーム学校」において、目標、内容、方法についての合意形成にも活かされるのではないでしょうか。

ぜひ、すべての科目において、できる限り「参加型」アクティブ・ラーニングの視点からの学び合いをとりいれてはいかがでしょうか。また、米国の着要員養成課程においては「協同学習」「プロジェクト学習」を取り入れることで、自主的な学びの中で、内容の修得の深化を図っています。

そのような工夫もすべての科目について行うことが可能であると思います。

◇論点2 ESD としての方向性について

ESD持続可能な未来のための教育は「価値観」の教育であると言われています。いまのままでは続かない、危機的な状況にある産業科学技術社会をどう持続可能な社会へと舵取りするか、そのためにはわたしたちの価値観が変わらなければならない。そのことが昨年岡山県や愛知県で開かれたESDフォーラムで採択されたGAPでも繰り返し確認されています。すべての教育をESDへと「再方向付ける」ことがアクション・プログラムの中でも求められています。
しかし、今回の答申を読んでもESDとしての再方向付けという文言は出ていません。「はじめに」においてなぜいま見直しが求められるのかという問題意識としては持続可能性も含まれているように思われますが、それだけでは十分ではないと思います。
持続可能な社会の基盤となる価値観と、そのような社会を主体的参加によって築きあげるためのコンピテンシー、生きて働く力の両方が大切なのです。

そのような価値観とコンピテンシーを育てる教員にも、そのような価値観とコンピテンシーが身に付いていることが求められるのは当然なのではないでしょうか? その上で、答申が何度も強調しているように「学び続ける姿勢」、時代の変化や要求に応えていくことができる力があるのではないでしょうか。

◇論点3 チーム学校で取り組むために

もう一点、答申の特徴は、学校全体で取り組む姿勢の提案である。
Whole school approachというのは環境教育やESDでずいぶん前から指摘されてきたことであり、ESDが価値観の教育であるということを鑑みれば、学校全体に首尾一貫性があることが、効果的な教育につながることは容易に諒解できることである。従って、教育的効果の点からも、「チーム学校」によるアプローチは必須である。
一方で、すでに総合学習の時間における教員の協力についての前例が存在する。総合的な学習というのは教科横断的な内容であり、かつ、問題解決の行動化へのつながることが期待された学習でした。しかしながら、総合的な学習推進のための加配も、研究支援も、体制もなく、それぞれの教員と学校にお任せでした。
今回、ミドル・リーダーというOJTを支援する体制メンバーが強調されているようですが、これまでの教員養成の中に「協同学習」やアクティブ・ラーニングの学びはありませんでした。
なんの支援策もないまま、制度先行になるのではないかと危惧します。
いま、学校現場に「中堅どころ」が少ないのは現実です。しかし、それはこれまでの教員採用の無計画さによる結果であって、急に改善できるものでもありません。また、無計画な教員採用縮小によって、教員養成系学部が疲弊もしたのです。
今回の答申に、これまでの教員採用について反省があるように思えません。
チーム学校を推進するためには、そして、学び続ける学校づくりのためには、例えば『学習組織 五つの原則』など、チーム学習についての理論、そしてコミュニティ・オブ・プラックティスなどの実践が役立つのではないでしょうか。
チームを成功に導くカギは「システム思考」であるとピーター・センゲは言うわけですが、わたし自身は「ビジョンの共有」こそが鍵だと思っています。
果たして、今回の答申に従った改革で、学校に「チーム学習」のための時間とノウハウは生まれるのでしょうか?これまで、一匹狼であった教科教育の牙城、中等教育においてこそ、チーム学校をすすめるための方策がしっかりと考えられるべきではないでしょうか。

◇論点4 教員の多忙化に対する対策
答申は教員の資質能力の向上についてですので、教員養成や更新研修などについて述べられています。しかし、大切なことは育成された資質や能力をいかんなく発揮することができる環境整備ではないでしょうか。
チーム学校に対する支援策も環境整備の一つだと言えますが、なんといっても必要なのは、特に「学び続ける」教員という答申の大切な柱について言うならば、教員の多忙化に対する対策ではないでしょうか?
集金などの雑務、クラブや特別活動、そして進学指導などが、教科教育以外にも教員の時間とエネルギーに食い込んでいます。もちろん、学級定員が削減されれば、それだけかかる時間も少なくなるでしょうが、それだけで十分だとは思えません。
いま、非正規の学習指導員や支援員が増えています。実際には教員に、それらの人々を効果的に活用するためのコーディネーションという役割も求められているのです。今回の答申を読みますと、正規雇用の教員には、ミドル・リーダーという新たな役割も期待されるようになり、さらなる多忙化につながるのではないかという恐れすらいだきます。

答申には教員の多忙化に対する根本的な解決策が求められることも、かきそえていただきたく思います。


◆◇◆2. at ERIC主催研修ESDファシリテーターズ・カレッジ2015年度のお知らせ◆◇◆

10月からはスキル、行動力アップにつながる参加型学習の方法を学んでいます。

ESDはコンピテンシー、知識偏重ではなく、学んだことが「生きて働く力」となって、行動につながる教育を目指します。もちろん、その行動がESD的価値観に根ざしていることが大切です。

次回の研修「未来を学ぼう」は、未来志向の行動のあり方を提起するものです。

カリキュラムは未来志向の価値観に根ざして作られており、現状肯定的、伝統礼賛的な価値観ではなく、現状を理念に照らして課題を明らかにし、問題解決的に取り組もうとする姿勢を育てています。

「なってしまう未来」を「仕方ない」とあきらめるのか、それとも「なりたい未来」を想起し、そこに向かう行動を選択して行くのか。一人ひとりの主体的選択を育てることが民主主義教育の基本です。そしてESDとは、その行動選択の規準に「環境」や「人権」という価値観が反映していることを求めるのです。

一人ひとりの日々の選択の結果が、未来なのです。

どんな未来を望むのか。学習性無力感を強化する教育に、あなたの教育はなっていませんか?
■ESDファシリテーター養成講座 スキル「未来を学ぼう」
平成27年2015年11月28日(土)29日(日)

■研修プログラムの概要

研修プログラム

セッション1 共通基盤づくり
11:00-13:00
1. 二日間の内容について
2. 「未来を学ぼう」って何だろう? [出発点「知っていること・知りたいこと」]
3.  傾聴
4. 二日間の心がけ[一人で→ペアで→全体で]
5. ふりかえり

セッション2 流れのあるプログラム体験
14:00-16:00
1.世界のイメージ図を書こう、好きな点・嫌いな点
2.差別のある状況
3.理想の未来は
4.行動計画づくり

セッション3 『未来を学ぼう』教え方・学び方の特徴
16:00-18:00
1.3つの省察・ふりかえりシート
2.点検、ESDとしての再方向づけの視点を持つ
3.『未来を学ぼう』の特徴テキスト・リーディング
4.ふりかえりとまとめ

セッション4 アクティビティ実践
9:00-12:00

セッション5 プログラムの評価
13.00-15.00

セッション6 まとめと個人的行動計画
15.00-16.00

■これまでの主催研修の記録はブログに載せています。

■2015年(平成27年)6月27日28日テーマ「国際理解」 
http://ericweblog.exblog.jp/21486407/

■2015年(平成27年)7月25日26日テーマ「PLT木と学ぼう・環境」  http://ericweblog.exblog.jp/21488427/

■2015年(平成27年)9月26日27日テーマ「人権」 
http://ericweblog.exblog.jp/21688691

■2015年(平成27年)10月24日25日スキル「対立から学ぼう」 
http://ericweblog.exblog.jp/21780337/
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by eric-blog | 2015-11-16 09:04 | ERICニュース | Comments(0)
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